日本人の賃金が上がらない背景は何か。経済評論家の加谷珪一さんは「諸外国の企業が業績の継続的な拡大と賃金の上昇、時代への対応を実現できているのは、経営者に厳しい条件を課しているからだ。ひるがえって日本の上場企業経営者は、単に年功序列で従業員から昇格した人が大半を占め、その間に業績を飛躍的に拡大させようというインセンティブが働かない」という――。
※本稿は、加谷珪一『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
厳しい条件が課されている上場企業の経営者
企業の経営者というのは、法的・社会的に見て従業員とはまったく異なる存在であることを理解しておく必要があります。従業員はあくまで企業に雇われる存在であり、その立場は法律で保護されています。
従業員は時間あたりいくらの賃金をもらうといった形で、金銭的な報酬が約束されており、自身の行為についても重大な過失がない限り、結果に対して責任を負う必要はありません。
しかしながら経営者はまったく異なります。
株式会社の経営者というのは、企業の所有者である株主から依頼を受けて、企業を経営するために雇われた人です。特に上場企業のような大きな会社の場合、組織をマネジメントし、業績を拡大させて従業員の賃金を引き上げるというのは、決して簡単な仕事ではありません。
上場企業の経営者になるためには、この容易ではない仕事を成し遂げられるだけのスキルや人望、交渉力などすべてを兼ね備えていなければならないというのが原理原則です。
こうした厳しい条件が課されているからこそ、上場企業の経営者には、場合によっては億単位の報酬が支払われ、高い社会的地位も与えられているのです。
逆に言えば、株主や社会に対して約束した業績を達成できない経営者は、自らその座から降りる決断が必要ですし、本人がそれを認めない場合には、株主が株主総会などを通じて退任を迫るというのが自然な流れです。

