日本は年功序列で従業員から昇格した人が大半
諸外国の企業が業績の継続的な拡大と賃金の上昇、時代への対応を実現できているのは、経営者にこれだけの厳しい条件を課しているからに他なりません。
ひるがえって日本の上場企業経営者というのは、単に年功序列で従業員から昇格した人が大半を占めています。
こうした人たちは、自分の任期だけ無事に過ごして退職金をもらうことばかり考えてしまいますから、その間に業績を飛躍的に拡大させようというインセンティブが働きません。企業の経営者にそのようなインセンティブが働かない以上、日本企業の業績が長く低迷し、賃金が下がっているのはむしろ当然のことなのです。
米国は市場原理主義の国とも言われており、経営者に対しプレッシャーをかけるのは、株式市場に投資をする投資家が担います。投資家は経営者に対して、企業がより高い業績を残せるよう株主総会などを通じてプレッシャーをかけます。
経営者は高い報酬を得るため、好業績を株主に約束し、全力で経営に邁進するという流れで業績拡大が進んでいくわけです。一方、欧州の場合、米国とは少し違った形で経営者に対する動機付けが行われます。
フランスはミッテラン政権時代に企業の国有化を積極的に進めており、多くの上場企業が国営もしくは国有企業という状況になっています。従業員に適切な利益配分が行われていない場合、政府が積極的に経営に関与することでこれを是正しようという動きが見られます。
ドイツの場合、経営者が債務超過の状態を一定期間放置すると罰則が適用されるなど、社会的に経営者の行動を適正化しようという流れが確立しています。
賃金も上昇しないのは当たり前
日本では債務超過に陥った企業を整理するどころか、むしろ政府が補助金を注ぎ込んで経営陣を守ろうとするなど、経営者に対する対応が正反対です。業績が悪化した企業の経営者を救済するということばかり繰り返していては、賃金も上昇しないのは当たり前と言ってよいでしょう。
日本でもこうした状況を受けて、金融庁が主導して、企業のガバナンスを強化しようとする試みが過去何度も行われてきました。
一連の施策に対しては企業側の反発が大きく、なかなか定着しなかったのですが、政府や東証はいよいよ業を煮やし、コーポレートガバナンスに対して一定の基準を満たさない企業は上場を認めない方針を示したことで、企業行動にもようやく変化の兆しが見え始めています。
物事が単純だった昭和の時代ならいざ知らず、現代の企業というのは、単に利益を出せばいいという存在ではありません。社会の持続可能性や従業員の賃金、職場環境、取引先への配慮など多くの利害関係を最適化する必要があります。
こうした時代であるからこそ、諸外国では社内、社外問わず、有能な人材を登用して多角的な視点で経営を行うことが求められており、実際にそうした取り組みができる企業の業績が拡大しているのです。

