かつて食卓の定番だった魚肉ソーセージが、40年近い低迷を経て復活しつつある。老舗メーカーのUmios(旧マルハニチロ)が突破口を開いたきっかけの一つは、「開けづらい」と言われてきたオレンジ色の包装フィルムにあった。その負のイメージを払拭すべく、10年以上にわたる試行錯誤の末にフィルムの開封技術を刷新した。ライターの黒島暁生さんが開発の舞台裏に迫る――。(後編/全2回)

なぜ魚肉ソーセージは開けにくいのか

Umios(旧・マルハニチロ)において、業界全体で低調だった魚肉ソーセージがV字回復を見せた。その基軸は、主要な購買層である50~60代により深く訴求しようと健康に着眼し、特定保健用食品(トクホ)の認可を得た”「リサーラ」シリーズ”だった(あえて50〜60代の客に絞ったら大成功…40年低迷の「魚肉ソーセージ」を蘇らせた老舗メーカーの“逆転の一手”)。

魚肉ソーセージと言えば、商品そのもの以外に見過ごせない点がある。「正直、魚肉ソーセージは開けにくい」。そんなイメージを持つ人は少なくないはずだ。だが同社は、「1秒OPEN」と銘打った技術を開発。開封までにかかる時間が1秒というものだが、そこに至るまでには地道な試験が繰り返されていた。その秘話に迫った――。

お酒を片手に持ち、もう片手で魚肉ソーセージを持つおじさん。オレンジフィルムの先端、金具の根本を口元まで持ってきて、奥歯で開けようとしかめ面になった――昭和の時代の魚肉ソーセージは、遠からずそんなイメージだろう。金具を噛んだ感触を覚えている人もいるかもしれない。率直に言って開けづらい。

この印象は決して間違っていないはずだ。取材当時に同社で魚肉ソーセージ事業の全般を担当していた、チルド食品事業部(現・Umios推進部)の綿引悠太さんも「そんな印象を抱くお客様も少なくありませんでした」と振り返る。

同社が魚肉ソーセージをリリースしたのが1950年代。全盛期の70年代を過ぎ、1986年には、イージーオープンテープと呼ばれる赤い小さなシールつきの魚肉ソーセージが発売された。このテープを剥がすと切れ込みが入れられており、魚肉ソーセージを剥きやすくなるというものだ。

オレンジ色フィルムの“負のイメージ”

「弊社はお客様からのお声を頂戴し、さまざまな改良を行っております。確かに、以前は『そもそも魚肉ソーセージが開けづらい』というご意見をいただくことがとても多かったようです」

商品開発の仕事は、単に魚肉ソーセージの中身についてのプロデュースに留まらない。フィルムやパッケージといった、トータルでの視座が必要とされる。もちろん、トータルのなかに“イメージ”も含まれる。

いくら技術力があっても、それが消費者に届かなければ意味がない。すべての消費者にとって納得できる開けやすさなのか、「開けにくい」というイメージは本当に払拭できたのか――自問する日々が続いたのだと綿引さんは言う。

チルド食品事業部で事業企画課の主任を務めていた綿引悠太さん(現・Umios推進部 課長代理)
撮影=プレジデントオンライン編集部
チルド食品事業部で事業企画課の主任を務めていた綿引悠太さん(現・Umios推進部 課長代理)

「私自身は魚肉ソーセージが好きで、積極的に1日1本は食べています。本当にいいものだと思っていますので、家族にも勧めているほどです。ただ、多くの皆さんの開けづらさに関するイメージは非常に深刻で、それを魚肉ソーセージを食べない理由として挙げられるお客様さえいらっしゃいました。

実は当社は、すでにイージーオープンテープではなく、『くるんパック』という技術に転換し、昭和の頃よりは格段に開けやすいフィルムが魚肉ソーセージに使用されていました。実際、多くのお客様からもご好評でしたが、まだすべての年代のお客様に浸透しているとはいえない状況だったのも事実かもしれません」