“フィルムが裂けないか”心配だった

「輸送テストは、実際に出荷されるルートにしたがって、北海道から九州まで、長距離を運んでもらいます。

自社のトラックなどではなく、列車や船など実際のあらゆる運輸業者に依頼して、商品が到着した段階ですべてが開封していないかを確認する地道な作業です。商品として出荷される際には、当然、ほかの商品とごちゃ混ぜになって運ばれます。さまざまな圧力を加えたときにもフィルムが裂けないことを確認することができました」

当時をそう思い返す綿引さんの顔色は、緊張から安堵に移り変わった。

「どうしても『輸送中に本当に開かないだろうか』という心配はありましたね。それが最も恐れていたことではあります。ただこの開け方が成立すれば、私たちの魚肉ソーセージがいいものであることを伝えられると。だからなんとか成功してほしいという気持ちが強かったです。どうか開かないでというのが率直な願いでした。今も昔も、お客様が開封しようと思ったときには、魚肉ソーセージのなかで最も開けやすいという自負があります」

コスト5割増になっても譲れない

1秒OPEN導入に際して、かかったコストも少なくない。

「だいたい、従来のフィルムの2〜5割くらい高くなるとは思います。商品をしっかりと訴求して販売量を増やすことで、コスト面では将来を見据えると落ち着いてきます。それよりも、最優先すべきはお客様が商品に価値を見出していただくことですので、そのための対価としては、妥当だと考えております」

現在、工場で生産される魚肉ソーセージの量は非常に多い。具体的には、1分間に1つの充填機で180本のソーセージが詰められるという。完全に密閉されて安全に食べられ、また瞬時に開封できる商品を安定的に生産する技術力は、一朝一夕には得られないのだと綿引さんは話す。

「開け方」を披露する綿引悠太さん(現・Umios推進部 課長代理)
撮影=プレジデントオンライン編集部
「開け方」を披露する綿引悠太さん(現・Umios推進部 課長代理)

「肉を詰めながらフィルムで巻いて密閉を行うのですが、この技術を確立させるまでに10年単位の年月がかけられたと聞いています。生産性を維持しながら、一方で開けやすくもする技術は、すぐには獲得できない弊社独自のものです。フィルムメーカーはこの技術の特許を取得しており、単に同じ機械を導入すればどんな企業でも1秒OPENが可能となるという性質のものではありません。

また、圧着作業自体はもちろん機械が行いますが、他方で、機械のそばには熟練したオペレーターが必ずいて、細かな調整が欠かせません。一例ですが、生産日の気温などの変化、魚肉ソーセージの配合やくっつきの度合いによって、圧着の強さを微妙に変えているのです。輸送や店頭陳列の際には開かないけれど、お客様がわずかな力を加えればきちんと開くラインをしっかり見極めることができるのは、精密な機械作業のなかに人間の調整があるからなせる技でもあります」