開けやすさを追求

大切なのは「開けやすさ」が伝わるネーミングだ。2015年から、「1秒OPEN」のネーミングで世間に打って出ていた。綿引さんがこの部署に異動してきたのは2019年。並行して、引き続き開封のしやすさを追求することになった。当然ながら、自社のみならずフィルムメーカーとの折衝が必須となる。その起点となるのは、綿引さんが主任を務めるチルド食品事業部だ。

「この部署に異動するまでは福岡と東京で営業を担当していました。魚肉ソーセージの消費は右肩下がりという厳しい状況でしたが、食べ物としてはすごくいいものだと、可能性をずっと信じていました。

開けやすさを追求した取り組みは、社内で10年以上にわたって試行錯誤が繰り返されていました。私が当該部署に着任した2019年は、すでに実装段階がみえてきた頃だったと思います。

開けやすいフィルムを開発することは重要ですが、微弱な力で開いてしまっては流通上開いてしまうリスクがあり、食品の安全性が脅かされます。密閉と開封は相反するものであり、過度に開けやすくなることは同時に食品としての安全性のリスクが増してしまうという、トレードオフの関係にあります。問題はどれくらいの圧で密閉するかという点にあると考えました」

「密閉度」と「開けやすさ」のバランス

開けやすさと同時に、密閉力も落とさないという最適なバランスを求める。そのシビアな条件をクリアできる技術にたどり着いたのは、2021年だった。密閉と開封の技術的課題が本当に計算通り機能するのか。綿引さんは、最終テストの段階に立ち会うことになったという。

先行していた「1秒OPEN」のネーミングも相まって多くの消費者の支持を得た実績があるが、一方で「現場はある種の緊張感を伴います」と綿引さんはその当時を述懐する。

「もしも『ぜんぜん1秒で開かないじゃないか』という声があったら、ネーミングが偽りになってしまいます。そのため、非常に入念にあらゆる角度からのテストを試みました」

同社の魚肉ソーセージ
撮影=プレジデントオンライン編集部
同社の魚肉ソーセージ

たとえば社員が実際に開封を試みるのは当然だが、外部モニターによる開封テストで集めた人数は600人ほどと、力の入れ具合がうかがえる。また、落下させても開封しないことを確認する落下テストや、フィルムの安全性を確認する作業を経て、最終の輸送テストに臨んだという。

いくら実験を繰り返しても、実際の流通現場に対応できるかどうかはわからない。消費者の手元に届くまでに、輸送の振動や衝撃といった負荷がかかるのは避けられないからだ。