日銀が大規模緩和策から撤退できない2つの理由

諸外国も同様の大規模緩和策を実施していますから、やはり日本と同じように物価が上昇しました。ではなぜ、日本の物価がさらに上がるという見通しが成立し、為替が円安に振れているのでしょうか。その理由は日本だけが大規模緩和策からの撤退を決断できずにいるからです。

諸外国は大規模緩和策を実施し、それなりの成果を上げてきたことから、金融政策を元の状態に戻す「正常化」というフェーズに入っています。例えば米国の場合、2022年から金利を引き上げ、市場に流れ出たマネーを回収するという政策を急ピッチで進めてきました。

ところが日銀は、いまだに大規模緩和策を継続した状態にあり、現時点においても大量のマネーが供給され続けています。

他国が大規模緩和策から撤退し、日銀だけが大量にじゃぶじゃぶとお金を市場に提供し続けることで、当然のことながら日本では今後もマネーが余剰となり、物価が上昇して円安になるという予想が成り立つことになります。実際、そうした予想を背景に円安と物価上昇が進んでいます。

買い物をし、レシートを確認する女性
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日銀が大規模緩和策から撤退できないことには大きく分けて2つの理由があります。

ひとつは自民党内でアベノミクスを継続するべきだという強い声があったこと。もうひとつは、景気回復が実現できていない中で大規模緩和から撤退すると、経済に相当な逆風となる可能性が高く、政府が躊躇したからです。

金融正常化に伴う副作用を多くの人が懸念

アベノミクスが始まった当初、一部から反対の声が上がっていましたから、自民党内部では強引に反対意見を封じ込め、実施をゴリ押ししたという経緯があります。

このため、一部の自民党議員やアベノミクスに賛同した専門家は、アベノミクスがうまくいかなかった現実をなかなか認めることができず、撤退の決断ができずにここまで来てしまいました。

しかしながら、経済政策とはまったく別の理由で旧安倍派議員に、いわゆる裏金問題が浮上したことで、同派は事実上、瓦解した状況にあります。加えて岸田文雄前首相が派閥解消宣言を行ったこともあり、派閥そのものも機能しなくなりました。

アベノミクスを強力に推進してきたのは安倍元首相を中心とした旧安倍派の議員たちですから、派閥の消滅とともに、アベノミクス継続を求める声も急速に萎んでいるのが現実です。

したがって、現在の自民党において、政治的理由でアベノミクスを継続すべきという声はかなり小さくなったと見てよいでしょう。そうすると大規模緩和策から撤退できない最大の理由は、やはり金融正常化に伴う副作用を多くの人が懸念しているからに他なりません。