安い店にもくつろげる店にもなれなかった

さらにロッテリアは、高単価商品をゆっくり味わえる店内環境を整える「カフェ化」のトレンドにも乗り遅れた。美味しいものを選択する顧客はゆっくり寛いで食べたい志向があり、店側もそれなりに落ち着ける環境をつくる必要がある。この頃のロッテリアは改装が後回しとなったまま、各店とも老朽化が進み、店内は快適とは言えないままだった。

こうなると、先にカフェ化を進めたマクドナルド・モスバーガーとの差が開くだけでなく、顧客を掴んでいた「ドーナツ100円セール」を中止してでも店舗のカフェ化を優先させた「ミスタードーナツ」、フードを充実させたカフェ「ドトール」「スタバ」との競合も生じ、選ばれなくなるのは、必然の話だ。

ミスタードーナツの商品
筆者撮影
ミスタードーナツの商品

対:マクドナルドとのディスカウント競争で燃え尽きたロッテリアは「ただ安いだけ、店内の居心地がいまひとつなチェーンストア」になり、500店以上もあった店舗は、いまや「バーガー・ワン」傘下で273店舗にまで縮小してしまった。これが、マクドナルドを相手に「不屈のディスカウンター」を演じたロッテリアが歩んだ「自滅」へのストーリーだ。

マックは「戦略」ロッテリアは「やせ我慢」

マクドナルドとロッテリア、2度にわたる価格競争には、実はウラがある。

「サンキューセット」が発売となった1987年は、いわゆる「プラザ合意」で極度の円高が進み、輸入食材が多いマクドナルドは莫大な差益を手にしていた。さらに、「59円バーガー」が発売となった2002年はBSE(狂牛病)で牛肉への信頼が揺らいでいたころでもあり、牛肉パティの消費に寄与したマクドナルドは、輸入業者・畜産業者に莫大な“貸し”を作ることができた。

マクドナルドのディスカウントは2度とも今後の戦略を重視したもので、必ずしも利益を獲る必要がなかったのだ。

一方でロッテリアの値下げ実現の原資は「企業努力」、ひとことで言い換えると「気合」であった。マクドナルドvsロッテリアの価格競争は「戦略的値下げvsやせ我慢」とも言えるもので、無理のある値下げにロッテリアが踏み切った時点で、勝負は決していたのだ。

こうして年月が経ち、マクドナルドは王者の余裕で「ディスカウント支持層」「グルメバーガー支持層」を総取りし、値下げに追従しなかった「モスバーガー」は商品力で生き残り、大手ではロッテリアだけが独り負けした。

「サンキューセット」「59円バーガー」に端を発した価格競争から教訓を得るとすれば、「ディスカウント支持層は、ブランド支持を表明していてもすぐ逸走する」「対抗措置も取ろうにも、企業体力を失っては元も子もない」「何だかんだで、結局は商品力(美味しくてバリューがあるかどうか)」といったところか。