「上司に怒られるのがつらい」と入社1カ月で退社

現代の若者がリーダーになりたがらない理由は、もう1つあります。

それは、「指摘」を「叱責」と受け取ってしまいやすい、という彼らの「繊細さ」です。指導する側が良かれと思って伝えたことであっても、彼らは「叱られた」と受け取って傷つき、モチベーションを下げてしまう。そんな場面に頭を悩ませるリーダーは、決して少なくありません。

あるクライアント企業からご相談を受けた事例をご紹介しましょう。

4月に入社したばかりの新入社員が、5月の連休明けには退職を申し出たとのこと。会社が対応を協議していると、その翌日、なんと同期のもう一人も退職を申し出ました。「Aさんが辞めるのなら私も……」という連鎖退職です。退職理由は、「上司が怖い」「感情的に怒られるのがつらい」というものでした。

ごく当たり前の指摘が“叱責”に変換される

当初、会社側は上司の指導法に問題があると考え、アンガーマネジメントの研修を検討していました。しかし、詳しく調査を進めると、新人側にも問題がある可能性が見えてきました。彼らが「叱られた」と訴えたのは、例えば次のような場面でした。

・机の端に置かれた書類を見て、「下に落ちて紛失すると困るから、もう少し中に置こうか」と注意した。
・「このやり方だとミスが起きやすいから、こうしてみて」と、仕事の進め方を説明した。

一見、ごく当たり前の業務上の「指摘」や「説明」です。しかし、このやり取りが、新入社員の中では「叱られた」「命令された」という、非常にネガティブな体験に変換されたというのです。「今まで家庭でも学校でも怒られたことがないのに理不尽だ。職場では毎日注意されて嫌になった」と言って退職したとのこと。

彼らはこれまで、「良いね、良い感じだよ」と肯定される経験ばかりを重ねてきたのかもしれません。

この一件以来、ご相談を受けた企業の社長は、学生時代のスポーツ経験を尋ねていると言います。体育会系のクラブ活動などを経験している若者は、「先輩や監督からの厳しい指示や指摘に慣れているから」というのが理由です。指導を素直に受け止めながら、精神的にも打たれ強いようです。