ハンバーガーの「立ち食い」が爆発的流行
しかし、私が、ここなら、と目をつけた場所のうちの何カ所かが、軒先を貸すことすら断わってきた。ただひとつ、私が初めから目をつけていた特等地、銀座三越は岡田茂元社長の英断で、軒先を貸そうと私の申し出を快諾してくれたのだ。
しかし、日本の場合立食いというと、駅のソバ屋のように、どことなく、うらぶれムードがある。だからといって1個80円という安いハンバーガーをうらぶれムードで売ってはイメージ・ダウンである。インテリや女性客をつかむことはできない。
そこで、私は銀座三越にハンバーガー店をオープンするに当たり、明るくモダンで清潔な立食いのイメージでいくことにし、うらぶれムードは一掃した。
作戦は図に当たり、明るくモダンで清潔なマクドナルドの立食いに、若い女性客が殺到した。つられて男の客がくる。外国人がくる。ヤングがくる。ハンバーガーは爆発的売行を示した。
こうなると、英断をくだした三越とは逆に、妙にノレンにこだわって、マクドナルドのハンバーガーに軒先を貸すことをためらったり拒んでいたところまでが、モミ手で私のところへやってくるようになった。「大したものですなあ。藤田さん、ぜひ、当方の軒先も借りていただけませんか」と言うのである。
ハンバーガーの登場で老舗に新風が吹く
私は銀座の次に新宿へ進出した。
新宿の表玄関である東口を出ると正面に食料品の老舗の二幸がある。この二幸の客は老人やちょっと気取った階層の奥様などで、スーパーで買えるような品物をわざわざ高い金を払って二幸の包装紙に包んでもらいたいためにやってくる客が大半だった。
二幸はそんなお人好しの商売をやっていたのである。ところが、ここへマクドナルドのハンバーガー店がオープンすると、客の顔ぶれが一変した。つまり、これまでのちょっと気取った客が眉をひそめるような客が怒濤のように押し寄せたのである。
彼らはハンバーガーを食べながら、店の中を闊歩するようになった。ハイティーンもいれば、長髪族もいる。二幸は明治100年の眠りを覚まされたようににぎやかになった。
そして、ついに、高級食料品店二幸は、店内を大改装し、2階をヤング向けのファッションフロアにするほどの大変貌をとげた。ハンバーガーが老舗を変えたのである。もちろん、二幸は華麗なる変身をとげることで、儲かる道へつき進んでいったことはいうまでもない。

