ミラノ・コルティナ五輪では日本人選手が活躍しメダルラッシュが起きた。昭和医科大学客員教授の加藤俊徳さんは「自分より優れた存在を見たときに嫉妬して終わるか、それを原動力に成長できるか。そこが健全な生き方の分かれ目となる」という――。

※本稿は、加藤俊徳『いじめ脳 脳科学が解き明かす「メカニズム」と「対処法」』(SB新書)の一部を再編集したものです。

競技のメダリスト
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自分より格上の人を見て「いいな」

自分が愛情や重要性を感じているものについて、自分よりも格上の人を見たとき、人は「いいな」「うらましいな」という感情を抱きます。それが妬ましさに転じると「嫉妬」の感情になるわけですが、嫉妬そのものは悪感情とは言えません。

なぜなら、嫉妬の感情は強い向上心につながり、「なりたい自分」になるための努力へと人を導いてくれる場合があるからです。

脳にとってもっとも不愉快なのは「何も変化が起こらない状態」です。言い換えれば満足しきった飽和状態、新しいことを学習していない状態です。脳は常に働きたいし、成長したいようにできているからです。

そして脳が常に働き、成長するためには、何かしらの動機づけが必要です。その動機づけ要因として、もっとも強く作用するものの1つが「嫉妬」なのです。

嫉妬を健全な動機づけに転化

自分の感情の動きを明確に自覚するかどうかは別として(しないケースのほうが多いと思いますが)、自分よりも格上の人を見たときに嫉妬を感じ、「よし、自分もがんばろう!」と思えるわけですね。

しかし、嫉妬が常にこうした前向きな動機づけになるとは限らないことは、きっとみなさんも想像しているところでしょう。嫉妬にかられて人を貶めようとする、攻撃して傷つけようとする……こんなケースを繰り返してきたのもまた、ヒトという種の1つの姿です。

嫉妬そのものは悪いものではないのに、どうして、それが健全な動機づけにつながる場合と、そうでない場合があるのでしょう。

そこで大きなファクターとして考えられるのは「記憶の積み重ね」だと思います。

つまり、育ってきた環境で、嫉妬という感情について「どう付き合ったらいいのか」「どう反応したらいいのか」を刷り込まれ、学習してきたか、です。

たとえば、「まわりの大人たちが妬み嫉みから人を攻撃している様」を見て育った脳は、それを「嫉妬に対する正しい反応」として反復学習します。脳は学習したことを素直に実践するものなので、自分もまた、妬み嫉みから人を攻撃するようになるでしょう。

逆もまたしかりです。嫉妬を健全な動機づけに転化している人たちに囲まれて育ったのなら、脳は、その反応を反復学習し、やがて自身も実践するようになるでしょう。