ディズニー副社長から驚きの発注
そんなとき読んだのが、ヒューレット・パッカード(HP)の創業者ビル・ヒューレットとデイブ・パッカードの自伝『THE HP WAY』だった。
そこに書かれていた創業に至るいくつものエピソード以上に、私の目に飛び込んできたのは次の事実だ。
「ディズニーランドは夢のある世界をつくり出すために、新しいテクノロジーを積極的に取り入れている」
これかもしれない⁉
私は、最後の望みを託してウォルト・ディズニー・プロダクションへ営業に向かった。同行者5名分の飛行機代がなかったため、シリコンバレーから車で5時間かけてロサンゼルスへ。
ディズニーランドのバーバンク開発センターで数名の前でプレゼンテーションを行うと、具体的な質問が続出して議論は白熱していった。気がつくと私は自分の考古学への思いや、中南米をへてスタンフォードにたどり着いたこれまでの経歴も語っていた。
すると、ずっと私の話を聞いていた一人の男性がこう言った。
「とてもおもしろい。次はいつ来るんだい?」
なんとヴァイス・プレジデントのビル・ノビーさんだった。興味を示してくれたのだ。
そして2度目のプレゼンの後、1000万円を超える発注をしてくれた。こうして私はミッキーマウスやドナルドダックなどのキャラクターを映し出す大型スクリーンや、屋内で打ち上げ花火の効果を出すための装置をつくることになったのだ。
「やった‼」
私は飛び上がらんばかりに喜んだ!
苦労が報われた瞬間だった。
「前金として3分の1を払うよ」
ところが、シリコンバレーに戻ってから、我に返った。
注文が大きすぎて、材料を買う資金が足りないのだ。翌日、私は再び5時間ハンドルを握ってロサンゼルスへ戻り、預金通帳を見せながら頭を下げた。
「手持ち資金で賄える範囲の注文量に減らしてほしい」
するとノビーさんは驚いた表情で「ちょっと待っていなさい」と部屋を出て行った。3時間は待ったと思う。戻ってきた彼は真剣な面持ちで小切手を差し出した。
「前金として3分の1を払うよ」
経理部門と交渉してくれたのだろう。
だが、私はそれまでそんなに大きな金額の小切手を見たことがなかった。驚いてしまって、間の抜けた質問をしたのを覚えている。
「この小切手を銀行に持っていったら現金が引き出せるのですか?」
ノビーさんは微笑んで、窓の外を指さした。
「目の前の通りの向かいの銀行でも、君のオフィスの近くでも、どこの銀行でも現金化できるよ」
「だけど、もし私が持ち逃げしたら……とは考えないのですか?」
そう聞くと、彼は私の目をジッと見て、穴が開くほどジッと見つめてからこう言った。
「何千という業者を見てきたが、君は私を騙すような人間ではない。目を見ればわかる。つまらないことを考えていないで、早く帰って仕事をしなさい」
なんという大きな人物なのだろう。私は一瞬で魔法にかけられたような気持ちになった。これがディズニーなのか……。
帰り道の運転は大変だった。
何度も熱いものがこみ上げ、視界がにじんで仕方なかった。
自分はなんと幸運な人間なのだろう。私も事業で成功したら、同じように若い人を支援しよう。ハンドルを握りながら、そう決意した。



