日本で初めて“村”にできた地元主導型SCは成功
現在、地元主導型SCはすでに閉店しているか、営業中でも老朽化や衰退が否めない施設が多くなっている。その一例が、1978年に建てられた東金ショッピングセンター サンピアだ。
「東金ショッピングセンター サンピア」は千葉県東金市にあり、周辺に強力な競合がないことから地域一番店として存続している。買い物客の姿は見られるが、外壁が老朽化しており、館内にはぽつぽつと空き区画がある状態になっている。
一方、リニューアルを重ねて繁盛している地元主導型SCも存在する。代表例が、岩手県北上市にある江釣子ショッピングセンター パル(以下、パル)だ。
パルはさん・あぴおと同じく、江釣子村(1991年北上市に合併)という農村地帯に、地元商店主らの協同組合によってつくられた地元主導型SCである。1981年12月にオープンし、核店舗のジャスコと約50店舗の専門店が出店した。車社会の到来による購買力の流出を危惧した若い商店主によって計画され、インターチェンジの近くに建設された。
江釣子村は当時の岩手県で最小の村で、人口は8000人ほど。パルの計画当初から、そんな小さな村で大型ショッピングセンターが成り立つのかと言われていた。
しかし、オープン後の売り上げは好調に推移。周辺都市にはジャスコやニチイ、イトーヨーカドーを核とするショッピングセンターが続々と開業したが、大々的なセールやイベントを開催して顧客を引き留めてきた。
特に隣接する北上市の中心市街地とは双方の大型店の進出にあたって訴訟を起こすなど、かつては熾烈な争いを繰り広げてきたが、現在はパルのほうが賑わいを見せている。
2つの地元主導型SCはなにが違ったのか
パルとさん・あぴおは、いずれも村外へ流出した買い物客を呼び戻し、反対に近隣都市からも買い物客を呼び込もうと意気込んだ商店主らによって開発された。協同組合方式の地元主導型SCであること、村に立地していたこと、インターチェンジ近くに建設されたことなども共通している。
パルは新たな商圏を生む「立地創造」を実現し、競合に負けることなく、近隣の市町村から買い物客を集め続けている。一方、さん・あぴおを待ち受けていたのは、競合の進出と核店舗の閉店、それに伴うテナントの撤退という茨の道だった。
2022年11月に、専門店を運営していた新治商業協同組合が破産。現在はわずか4店舗のみで営業を続け、施設の大部分は閉鎖されている。
2つの地元主導型SCの成否を分けたのは、「核店舗の存在」が大きい。さん・あぴおは、オープンから10年足らずで核店舗の長崎屋を失った。これはさん・あぴおが直接的な原因ではなく、長崎屋の企業自体の経営が傾き、破綻したためだ。さん・あぴおにとっては、予期せぬ不運な出来事であった。
パルの核店舗ジャスコは、イオンに名前を変え、44年以上にわたり営業を続けている。強い集客力を持つ核店舗が長年にわたって鎮座していることも、パルの成功要因の一つだろう。


