バットよりペンを持つ方が大事な時もある
――ありがとうございます。「監督哲学」については野村さんからなにか教わっていたのですか。
【髙津】実は監督論は教わっていません。僕が監督になって教えてもらいたいと思った時には、もう野村監督は亡くなっていましたから……。「こういう場合、どうすればよいですか?」「僕の采配はどうですか?」みたいなことをぜひ聞いてみたかったですね。
――野村監督のミーティングでは、ケーススタディを通じて、さまざまなことを随分考えさせられたそうですね。
【髙津】ゲームの局面ひとつ一つに対して「なぜこうなるのか?」「なぜその時そんなふうに考えたのか?」を繰り返し考えさせられました。体で覚えるのがスポーツですが、時に座って勉強することも、大事だと教えられたのです。
ボールを少しでも速く投げられるようになることや変化球を投げられるようになるといった技術は、理論を学んだ方が習得は早くなります。今はさまざまな練習器具やパーソナルトレーナーがいて、練習メニューも進化しています。
ノートにペンで書く暇があったら、少しでもバットを振った方がよいと考える人がまだまだ多いのも現実です。ですが「考える」という意味において、座学のほうが有効な場面はたくさんあると思います。
「努力の方向性」を間違えてはダメ
――髙津さんも、監督として座学のミーティングはやっていたのですか?
【髙津】「このピッチャーに対してどう攻略するか?」「このバッターに対してはどう攻めるか?」を選手たちに考えてもらうミーティングはよくやりました。
野村監督はミーティングで「人生とは?」「組織とは?」をシーズン中もずっとやっていましたが、僕の場合、さすがにそこまではできません。
僕がやったことで言うと、「どうやったらストライクが入るか」を紙に書いて配布しました。ミーティングではそれを読み合わせしましたね。
そんなことをテーマを変えながら5~6回やりました。最終的に伝えたかったのは、「ピッチャーにとってコントロールはどれほど大事か」ということです。
150キロ投げるよりも、100キロでコースいっぱいに投げたほうが打ちづらい。そのことを理解してもらいました。そんなこと言っても、選手にはなかなか分かってもらえないのですが、「努力の方向を間違えてはだめですよ」ということを伝えたくて。
――野村監督のミーティングが、髙津さんにも受け継がれていたのですね。
【髙津】そうです。当時、書き溜めた「野村ノート」を何度も読み返しながら、活用しました。「あの時、野村監督はこう言ったな」と……。すごく役立っていますね。

