「節税対策でしょ」という批判もあるが…

ウォーレン・バフェット、日本であれば柳井正や孫正義。彼らは使い切れないほどの富を築いた後、そのかなりの部分を寄付や社会貢献に回し始める。

世間はこれを「節税対策」「イメージアップ」と解釈する。しかし、節税が目的ならもっと効率的な方法がいくらでもある。

イメージアップなら広告を打てばいい。そもそも彼らのレベルになれば、世間の評判など気にする必要もない。

ウォーレン・バフェットは投資で天文学的なリターンを出し続けた。しかし93歳になった今、「もっと金を増やす」ことにかつてほどの興奮は感じないだろう。

彼らが求めているのは、新しいゲーム、新しい物語だ。「俺が寄付した奨学金で、貧しい村の子どもが医者になった」「俺が出資した研究で、マラリアで死ぬ子どもが減った」――これは金を稼ぐゲームとは全く異なる興奮をもたらす。

自分の富が誰かの人生を変える。自分の決断が世界にインパクトを与える。その物語の「主人公」ではなく「脚本家」として、舞台裏から全てを見届ける。これこそが、富裕層が慈善活動に惹かれる本当の理由なのだ。

オフィスの窓から外を眺める男性経営者
写真=iStock.com/Tom Merton
※写真はイメージです

人間は、自分の物語を誰かの成功に接続したい生き物である。

毎日同じことの繰り返し。一人で完結する人生は、どこか味気ない。

誰かを応援する。誰かの成功を祈る。誰かの夢に投資する。そうすることで、自分の人生が「誰かの物語」と交差する。

自分一人では描けない大きな絵の一部に、自分がなれる。

商店街のおっちゃんにとって、それは地元の甲子園球児だった。商店街のおっちゃんが野球留学生を素直に応援できないのは、狭量だからではない。どら焼きを買いに来た記憶がないからだ。

相撲好きの旦那衆にとって、それは贔屓の力士だった。

宗次徳二氏にとって、それは若きヴァイオリニストたちだった。

ルネサンスの富豪メディチ家にとって、それはミケランジェロだった。

対象は違えど、心理は同じだ。「俺は、この子の物語の一部になれた」――その感覚が、人を動かすのだ。

さて、あなたはどうだろうか。「この子の物語を、俺は見届けたい」。この物語への参加権を手にする誰かを見つけたとき、「あなたの支援であなたの物語は変わるのだ。

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