※本稿は、豊留菜瑞『人見知りの仮面』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
「話さなきゃ」が会話を苦しくする
かつての私は、会話とは「自分から何かを話さなければいけないもの」だと思い込んでいました。
ただ人見知りの人にとって、この思い込みこそが最大の苦しみを生みます。
ある日、仕事で初めて会う方とランチをすることになりました。
業界の先輩で、尊敬している方です。絶対にいい印象を残したい。
そこで席に着くなり、私は用意してきた話題を次々と繰り出しました。
「最近の業界動向、すごく変化が早いですよね。特にAI関連の動きが激しくて、私も最近すごく勉強してるんです」
「先日発表されたあのプロジェクト、見ました? あれ、すごく面白いアプローチだと思って。私もああいう視点で仕事したいなって」
加えて相手が何か言おうとすると……、「あ、そうそう、それで言うと、最近読んだ本にも似たような話があって……」と、間髪容れず新しい話題を振り続けました。
この時、私の頭の中は次の話題を探すことで必死。相手が何を話していても、聞いているようで「次は何を言おう」とばかり考えているのです。
会話は続いているのに、なぜか距離は縮まりません。
それもそのはずです。
相手が何を話していたのか、
どんな表情をしていたのか、
どんな気持ちだったのか。
全然、見えていませんでした。
会話で大切なのは、「自分が何を話すか」ではなく、「相手の話を、どう受け取るか」だったのです。
「話す役」をいったん降りてみる
なお、「自分が話さなきゃ!」「自分がこの場を盛り上げなきゃ!」というプレッシャーで、意識が自分にばかり向いてしまう現象を、心理学では「自己注目」と呼びます。
これは、社交不安を強める最も典型的なパターンだと言われ、心理学者のクラークとウェルズによる「社交不安障害の認知行動モデル」の研究では、「自分への注目が高いほど会話がうまくいかなくなり、さらに自己評価が下がる悪循環が起きる」と示されています。
つまり、人見知りの人が苦しくなるのは、「話すスキルが低いから」ではありません。
“自分をどう見せるか”に意識のほとんどが奪われてしまうからです。
では、どうすればいいのでしょうか?
相手の前に立った時、「自分から話すこと」をいったん、諦めてみる。
まずはここから始めてみてください。

