テレビを見ている時にすべきこと
この関連は時間が経ってもある程度残っており、「使い方次第で発達に響く可能性」を示唆しています。マラワーラチら(2024)(※8)のメタ分析は、視聴の「文脈」に注目しました。流しっぱなしのテレビや、年齢に合わない番組は、認知や情緒の発達と負の関連を示した一方で、親子で一緒に番組を見て会話する「共同視聴」は、むしろ認知的なプラス効果が見られました。
また、チャンら(2017)(※9)は中国の就学前児童を調べ、視聴時間が長いほど実行機能は低くなる傾向を確認しましたが、親が「今のシーンはこういう意味だよ」と説明したりルールを設けたりすると、その悪影響は弱まることを示しました。つまり「どんな文脈で見るか」がなのです。
また、メディア視聴時間が長いことは、他の活動に費やす時間が少ないことを示しています。結果的に会話が少ない、運動時間が少ない、睡眠時間が少ないということになり、これらが実行機能の発達に影響している可能性は見過ごせません。さまざまな限界はあるものの、研究の知見を踏まえると、デジタルメディアとの付き合い方で大事なのは「量」ではなく「質と文脈」です。
子どもと「テレビ・スマホ」との付き合い方
次のような工夫は、すぐに実践できるでしょう。
寝る前は画面を避ける:夜のブルーライトや刺激的な映像は眠りを妨げます。就寝1時間前からは本を読んだり親子でおしゃべりしたりするほうが、翌日の集中力に結びつきます。
親子で一緒に見る:教育番組や動物ドキュメンタリーを一緒に見て、「どの動物が好き?」「どうしてこうなったと思う?」と声をかけることで、会話が学びになります。
テレビを“流しっぱなし”にしない:BGM代わりにテレビをつけておく習慣は避け、見るときは「今から見る」と区切りをつけると、子どもの注意の切り替えがうまく育ちます。
時間より中身を意識する:暴力的で速い展開の映像よりも、ゆったりしたリズムの番組や教育的アプリを優先しましょう。
視聴後の一言を習慣に:「今日の番組で一番面白かったのはどこ?」と聞くだけでも、理解を整理する実行機能の練習になります。
スマートフォンが普及し、教育場面でもデジタルコンテンツは欠かせないものとなりました。使用を無にすることはもはや不可能でしょう。むしろ使用しない手はありません。「質と文脈を整えることで、発達にとってプラスにもマイナスにもなりうる」という視点を持ち、親子で関わりながら適切に使うことで、子どもの認知や実行機能を育てるための新しい資源に変えられるのです。
※1 Steelandt, S., Thierry, B., Broihanne, M. H., & Dufour, V. (2012). The ability of children to delay gratification in an exchange task. Cognition, 122(3), 416-425.
※2 Moriguchi, Y., & Hiraki, K. (2009). Neural origin of cognitive shifting in young children. Proceedings of the National Academy of Sciences, 106(14), 6017-6021.
※3 Sadeh, A., Gruber, R., & Raviv, A. (2003). The effects of sleep restriction and extension on school-age children: What a difference an hour makes. Child Development, 74(2), 444-455.
※4 Bernier, A., Carlson, S. M., Bordeleau, S., & Carrier, J. (2010). Relations between physiological and cognitive regulatory systems: Infant sleep regulation and subsequent executive functioning. Child Development, 81(6), 1739-1752.
※5 Barr, R., Lauricella, A. R., Zack, E., & Calvert, S. L. 2010). The relation between infant exposure to television and executive functioning, cognitive skills, and school readiness at age four. Merrill Palmer Quarterly, 56, 21-48.
※6 Bustamante, J. C., Fernandez-Castilla, B., & Alcaraz-Iborra, M. (2023). Relation between executive functions and screen time exposure in under 6 year-olds: A meta-analysis. Computers in Human Behavior, 145, Article 107739.
※7 McHarg, G., Louie, R. H. Y., Todd, M., & Howard, S. J. (2020). Screen Time and Executive Function in Toddlerhood. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics, 41(4), 241-248.
※8 Mallawaarachchi, S., Burley, J., Mavilidi, M., et al. (2024). Early Childhood Screen Use Contexts and Cognitive and Psychosocial Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatrics, 178(10), 1017-1026.
※9 Zhang, L., Pan, Y., Zhou, Y., & Chan, L. (2017). The Relations between Television Exposure and Executive Function in Chinese Preschoolers: The Moderated Role of Parental Mediation Behaviors. Frontiers in Psychology, 8, 1833.



