トランプ2.0「自壊メカニズム」の出発点

4.ジャクソン=マッキンリー・パラドックス
なぜ2つのOSは同時に走らせられないのか

ここで、トランプ2.0の構造的矛盾が表れる。トランプ2.0は、ジャクソンOSで国内の求心力を高めながら、マッキンリーOSで外向きの勢力圏拡張を行おうとしている。だが、この二つは同時実行を前提に設計されていない。

ジャクソンOSは、内向きの求心力を維持するために、低インフレ・低負担・内政最優先を要求する。一方でマッキンリーOSは、関税・軍事・占領・拠点維持という持続的コストを要求し、財政と物価に圧力をかける。両者は同じ国家資源――税、財政、国民の忍耐、同盟の信頼――を奪い合う。

外向きの圧力が強まるほど、インフレと赤字が進み、生活不安が増す。生活不安が増すほど、ジャクソンOSは怒りを動員し、さらなる強硬策を求める。結果として、外向きの拡張は加速し、統治コストは増大し、さらに内向きの支持基盤が破壊される。これは政策の是非の問題ではない。構造的な自己増幅ループである。

このループが回り始めたとき、国家には二つの亀裂が走る。財政的破綻(Fiscal Ruin)と、政治的分裂(Political Schism)だ。短期的には「強いアメリカ」を演出できる。しかし中長期的には国家が内部から裂けていく。これがトランプ2.0の自壊メカニズムの出発点である。

第2章:経済・財政の崩壊可能性

「帝国維持コスト(Imperial Overhead)」が、資源略奪のROIを上回る理由

トランプ2.0をそのまま突き進めれば、その自壊は、まず経済・財政から始まる可能性がある。これは道徳論ではない。冷酷な会計の問題だ。帝国主義が成立するためには、外で得る利益(資源・拠点・通商)で、外で支払う費用(軍事・治安・統治・再建)を上回らなければならない。すなわちROI(投資対効果)がプラスである必要がある。

19世紀には、この計算が成立しやすかった。だが21世紀では、世界の条件が変わった。現代の帝国は、「取ること」より「維持すること」にコストがかかる。しかもそのコストは、単に膨らむだけではない。政治的に回収不能な形で膨らむ。これが、ジャクソン×マッキンリー・パラドックスが財政破綻へ接続する第一の回路である。

1.ベネズエラ攻略は「宝の山」ではなく、巨大な負債になる
――“重質油の罠”と“占領下CAPEX”という現実

ベネズエラは「資源帝国主義」の象徴として語られやすい。石油埋蔵量という数字だけを見ると、確かに魅力的に見える。しかしここには、19世紀型帝国主義が理解できない現代の罠がある。それが重質油だ。

アメリカとベネズエラの国旗
写真=iStock.com/Oleksii Liskonih
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