領土を「戦略資産」とみなす視点
2.ウィリアム・マッキンリー
外に出て「帝国を築いた」大統領――関税と軍事で資源・拠点を押さえる
ウィリアム・マッキンリー(第25代大統領、1897~1901年)は、米国を事実上の帝国国家へ転換させた大統領である。彼の特徴は、国家の繁栄を「国内の再分配」ではなく、外部空間の確保によって作ろうとした点にある。
マッキンリーが象徴する政策は高関税だ。ただしここでの関税は、現代の「交渉カード」ではない。国内産業を守り、競争相手を締め出し、国家が市場を主導するための恒常的な主権行使として位置づけられる。国家が前に出て、国内の製造・雇用・賃金を守り、その経済余力を軍事・拠点へ転換する。関税→産業→軍事→拠点という連結が、マッキンリー的国家観の中核にある。
1898年の米西戦争で米国はフィリピン、グアム、プエルトリコを獲得した。ここで重要なのは、マッキンリーが領土を「統治すべき共同体」ではなく、資源・通商路・軍事拠点という戦略資産として捉えていた点である。領土は“面”ではない。“点”であり、世界に打ち込む杭だ。世界をルールで調整する対象ではなく、競争し、押さえ、排除する空間として見る。この外向きの遠心力がマッキンリーOSの本質である。
トランプが関税、資源、軍事拠点を一体で語るとき、その背後には「世界は資産であり、押さえた者が勝つ」というこの視線がある。ベネズエラやグリーンランドが、道徳や国際法の話ではなく「戦略資産の争奪戦」に見えているのは、このマッキンリー的国家観が作用しているからだ。
3.2人が実装した「国家運営のOS」
史実の背後にある統治ロジックを抽出する
ここまでの史実を、国家運営のOSとして抽象化すると、次のようになる。
・正統性:民意と結果(制度より勝利)
・主戦場:国内(生活不安の処理)
・統治技術:怒りの動員、敵の明確化、強い決断
・成果の形:短期での結束、支持の熱量
このOSが恐れる最大の敵は「外敵」よりも「生活コスト」だ。物価、雇用、賃金。つまりインフレである。内向きの求心力は、生活の安定と引き換えに維持される。
・正統性:国家成果(繁栄と拡張)
・主戦場:国外(勢力圏・資源・拠点)
・統治技術:関税・経済強要、軍事的示威、拠点の既成事実化
・成果の形:外で勝ち続けることで内を支える
このOSは、外で勝つことを前提にしているため、持続的な財政負担と国民の忍耐、同盟の信用を必要とする。

