遺伝性の乳がんでは有用性が認められている
「遺伝子検査」と聞くと、「遺伝子を解析することで、自分が将来罹る疾患やリスクの高い行動が明確にわかる」ということを期待される方がいます。しかし残念ながら、これは医療現場で行われている遺伝子検査の実態とは異なっています。
医療現場で遺伝子検査が活用されるシチュエーションとしては、遺伝性の乳がんや筋ジストロフィー、ハンチントン病といった一部の遺伝性疾患に関する予防がまず挙げられます。これらの遺伝性疾患に対しては、遺伝子検査を行うことで将来的に発症するリスクを高い精度で予測することが可能となっています。
有名な例では、世界的に有名な俳優のアンジェリーナ・ジョリー氏が2013年に遺伝子検査を行った結果、変異した場合に乳がんの発症リスクが高まる「BRCA1」という遺伝子に変異が認められたため、乳がんの予防措置として両乳房の乳腺切除および再建の手術を受けたケースがあります。ジョリー氏の診察を行った医師によると、将来的な乳がんの発症リスクが87%と診断されたため、ジョリー氏は予防的に手術を行ったということです。
日本においても遺伝性の乳がんに関する遺伝子検査はその有用性が認められており、3親等以内に乳がんの家族がいる場合など、条件を満たせば保険で「BRCA1/2」という遺伝子検査が受けられるようになっています。
ただし、筋ジストロフィーやハンチントン病のような遺伝性疾患に関しては、主治医が家族に対して遺伝子検査を勧めるケースも多いため、新たに検査を受けてリスクが見つかることは少ないと考えます。
また、がん治療に関しても遺伝子検査が活用されています。患者さんのがん細胞が持つ遺伝子を解析し、そのがんに対して有効な薬剤を特定したり、逆に副作用のリスクが高い薬剤を回避するために使われます。
こうした遺伝性疾患やがん治療に関しては、遺伝子検査を行うことで得られるものが多いため、主治医が遺伝子検査を勧めてくれるでしょう。
そして、通常の治療では効果が見込めないようなケースや、病名が特定できない疾患に対し、遺伝子検査を行って治療の糸口を発見するケースもあります。
東京大学医学部附属病院が行っている検査「東大オンコパネル(TOP)」はその典型的な例です。
オンコパネル検査とは、がん細胞の遺伝子の変異を一度に網羅的に調べる「がん遺伝子パネル検査」のひとつで、東大病院では「東大オンコパネル」として、18年8月から臨床性能試験を開始し、23年からは一部が保険適用となりました。
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