合意形成が難しそうな相手とは、どう交渉すればいいか。弁護士の嵩原安三郎さんは「相手が発注者、こちらが受注者で『50%の値下げ』を要求されたとして、『相手なりの合理性は何か』を理解することで、相手のニーズをつかむことができる。そうすると、はるかにスムーズで、なおかつお互いに満足度の高い結果を導くことができる」という――。
※本稿は、嵩原安三郎『ワンランク上の交渉力』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
「相手は合理的」という前提に立つ
交渉では、相手の立場からものを考えることが欠かせません。
その具体的なテクニックも紹介していきますが、まず前提として大切なのは、「相手は、相手なりの合理性に基づいて話しているんだ」という認識を持つこと、そして「相手の合理性は、どこにあるのか」と考えてみることです。はじめは難しいですが、思考ゲームとして考えてみてください。
以前読んだ本に「第二次世界大戦の日本軍の作戦は、すべて合理的だった」という話が書かれていました。
玉砕必至の無謀な作戦が合理的だったとは、いったいどういうわけでしょうか。
ここでカギとなるのは、「誰にとって合理的だったか」という視点です。
あとから客観的に見れば、圧倒的不利な戦局にもかかわらず、撤退せずに進軍を続けるのは、議論の余地がないくらい不合理です。
しかし、そのとき、その場で指揮をとっていた上官に、「ここで撤退したら自分のキャリアに傷がつく」「撤退は不名誉なことである」という考えがあったとしたら、「撤退せずに進軍」は合理的判断だったということになります。
たとえ、そのために1万人の兵士の命が奪われたとしても、その上官にとっては「合理的だった」といえるのです。

