子供が料理上手になるかどうかにも、食事観が大きく影響している。

「外食調理品ばかり食べている子供は、食事は食材を調理して食べるものという発想自体が浮かびません。親が家庭で料理をしていると、子供は自然とそれを見ながら観察学習をして知恵やスキルを習得する。その反対に、外食調理品を買って食べていると、親が家庭で調理する姿を見せないことになります。つまり、それだけ学習の機会が減ってしまうのです」

それを裏付ける報告もある。武見先生が女子栄養大学の駒場千佳子先生らと入学したばかりの女子大生を対象に行った調査では、調理が得意な学生は、小学校時代に親が調理する姿を身近に見ていて、そばで会話をしたりしていることがわかった。自然と手伝いもたくさんする。また母親だけでなく、父親や祖母も調理をするなど、料理に関わる人が多い家庭環境だったというのも特徴だ。

「調理力が低いと、当然のことですが加工食品を利用する頻度が高くなります。加工食品の利用頻度が高い人ほど、食事が不規則になったり、家族揃っての食事が少ないなど、好ましくない食習慣に陥りがちになるのです」

もう1つ、外食調理品にからむ問題として、「孤食」がある。外食産業の発展とともに1980年代ごろからクローズアップされてきた。習い事や塾に通う子供と、共働きや残業などで帰宅が遅い親の生活サイクルがかみ合わないため、家族が揃って食事をすることが難しくなり、子供1人、あるいは子供だけの食事が増えてきているのだ。

「孤食」になると何が問題なのだろうか。1つには、食品や料理の数が少なくなり、したがって体験する料理や味も単一になりがち、またコンビニ弁当やインスタント食品など簡便なものの利用も増える。それに加えて、家族団らんの食卓が持つ教育機能が失われる危険性もある。

たとえば、ご飯茶わんは左、みそ汁わんは右に置く。食べるときは、みそ汁、ご飯、おかずを交互に食べて、おかずなど単品だけ先に食べ終えない。よくかんで食べる。肘をついて食べてはいけない――。これら昔からよく言われていた体にいい食べ方や食事のマナーは、一緒に食事をすることで、自然に観察学習され伝わっていた。それが親から子へ伝わらなくなってしまうのだ。

「米ミネソタ大学の研究で、中高生を対象に、家族と一緒に食事をする頻度と食物摂取内容の関連を調べたものがあります。家族と一緒に食事をする機会が週7回以上の子と週3~6回、1~2回、0回の子を比べると、回数の多かった順に野菜や果物など健康にいいといわれている食べ物の摂取量が多いことがわかりました。さらに5年後に追跡調査を行ったところ、やはり中高生の頃に家族との共食回数の多かった子のほうが、相変わらず野菜と果物の摂取量が多いという結果が出たのです」