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「外食率」は、外食産業市場規模÷全国の食料・飲料支出額。「食の外部化率」は、広義の外食産業市場規模÷全国の食料・飲料支出額。いずれも、(財)食の安全・安心財団附属機関外食産業総合調査研究センターによる推計。

「食事の絵を描いてもらう『食事スケッチ法』という調査を埼玉県の小学5年生を対象に行ったことがあります。すると、おもしろい結果が出ました。子供にはまず、『今晩はどんな夕食だったらいいと思う?』と理想のメニューを描いてもらいます。次に、『では昨日の夕食はどんなだった?』と描いてもらうと、2枚の絵はとても似ているのです(笑)。これは、人は自分が体験したこと以上のイメージは描けないということを示しています。これまでの食事内容が、その人の食事観を形成し、『何を食べたいか』という食事の選択にも影響を与えるというわけです」

子供はいずれ親元を離れて、自分で料理をつくり、あるいは外食を利用して食べるようになる。そのときにきちんとバランスのいい食事を選択できるかどうかは、子供時代の食生活にかかっているのだ。

実際、こんなデータもある。武見先生は数年前、大正大学人間学部の長谷川智子先生らと共に、埼玉県内の市立中学生と、都内の私立大学に通う大学生の計40人に、1日3食何を食べたか食事の内容を撮影してもらう「写真法」と呼ばれる調査を行った。

その結果、たとえば1つの食事において「主食が2品以上のみ」という取り合わせの悪い食事をしていた者が中学生で30%、大学生で10%いた。これに炭酸飲料など糖分が多い飲料を摂取していた者も合わせると、中学生の75%、大学生の40%もが不適切な食生活を送っていることがわかった。「『いったい、これが食事といえるのだろうか?』と思うような写真がたくさんあって、正直驚きました。日本の食卓は、いまや荒廃の一途をたどっているのです」

その一方、武見先生はこうも言う。「私は東大で栄養学概論を教えているのですが、授業の中で学生に『実物大そのまんま料理カード』という教材を使って、自分が食べたい1食分のメニューを考えてもらったことがあります。すると、しっかり一汁三菜の絵を組み立てる学生が少なくないのです。やはり家庭でしっかりと食べさせてもらってきた子たちが、成績優秀に育って東大に入ってきている。そういう印象を持ちました」