詐欺事件の被害者になるのは、法律に疎い人ばかりではない。週5日、東京地裁に通う阿曽山大噴火さんによる『バカ裁判傍聴記』(Hanada新書)より、弁護士45人が騙された詐欺事件の裁判を紹介する――。(第3回)
取引、贈収賄、汚職の概念
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なぜ法律のスペシャリストはコロッと騙されたのか

弁護士にどんなイメージを持ってますか?

正義感が強くて真面目な性格だったり、弱者の味方をする頼れるヒーローだったり、頭が良くて高収入といったところですかね。弁護士にもいろんなタイプがいて人それぞれでしょうけど、法律に詳しいというのは全員に共通してるはず。いろんな訴訟や法律相談を経験してるので、どんな悩みにもそれなりの的を射たアドバイスをしてくれそうです。

そんな法律のスペシャリストである弁護士が被害者になった詐欺事件の裁判が行われました。

罪名 詐欺
被告人 税理士の男性(63)

起訴されたのは2件。

1件目は、令和4年4月〜11月の間、被告人が税理士として顧問契約していた弁護士事務所に所属している弁護士に、自己の用途に使うのを隠して共済金名目で入金させた件。もう一件は、令和4年4月〜12月の間、別の弁護士事務所の弁護士に同じような内容のメールを送り、11人の弁護士から合計約2500万円を入金させた件。

弁護士45人が被害者という超珍しい事件です。弁護士相手に金を騙し取ろうなんてすぐに見破られそうで、仮に思い付いても行動に移せないですけどね。でも、これだけの弁護士が騙されたというのが現実です。

4億円の借金を抱えていた被告人の手口

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学卒業後の平成2年に、1件目の事件の弁護士事務所で働くようになったそうです。2年後に独立して、弁護士事務所とは顧問契約を締結。なので、30年くらい被害者が所属する弁護士事務所の帳簿をつけたり、被害者の確定申告をしていたことになります。

被告人は、税理士の仕事とは別にサイドビジネスをスタート。令和3年に始めたミネラルウォーターの輸入販売が大赤字で、その後も不動産投資に失敗して4億円ほどの借金を抱えていたという。

そこで被告人は、高収入の弁護士にターゲットを絞って「節税対策にもなる」と連鎖倒産防止の共済と小規模企業共済を誘う嘘のメールを送信。個人口座にお金を振り込んでほしいと伝え、信じた弁護士が被告人の口座に送金した。

共済のほうから全然連絡が来ないことを不審に思った弁護士が多く、弁護士事務所が被告人を問い詰めると、お金を個人的に使い込んだと認めた。詐欺行為がバレてからも、被告人は2件目の事件の弁護士事務所に対して同じような詐欺行為を続けていた、というのが検察官の冒頭陳述になります。