おこめ券は支援策の「一例」にすぎない
この秋から冬にかけて、とかく「おこめ券」が話題になっています。一般の人やメディアだけでなく、一部の自治体までもが、おこめ券を配布するという案に対して反対姿勢を示し、政府や農水省、JA(農業協同組合)の「利権」「利益誘導」のための政策だと激しく批判しているのです。これは本当のことでしょうか。
まず、もっとも大事なことですが、おこめ券の配布は支援策の「一例」でしかありません。
日本政府は、今年度の補正予算案で自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」を2兆円拡充し、そのうち4000億円を「食料品の物価高騰」に対応するための特別加算としました。この特別加算の使い道として、内閣府の資料には「米などの食料品の物価高騰による負担を軽減するためのプレミアム商品券、電子クーポン、地域ポイント、いわゆるお米券、食料品の現物給付などの支援」と書かれています。
おこめ券だけでなく商品券などのさまざまな選択肢があり、「米などの食料品の物価高騰による負担を軽減するための」と記載されているのが重要なポイントです。
「コメが買えない」という声に応えた策
このように政策の内容をきちんと読めば、おこめ券は物価高対策の「一例」に過ぎないことは簡単にわかります。
みなさんもご存じのように、今さまざまな食料品が値上がりしていますが、コメの価格の上昇幅は突出しています。コメ関連の価格高騰が、コア消費者物価指数の総上昇率の約2割を押し上げている状況です。そうした状況下で、多くの国民から「コメが高すぎて買えない」「コメを買えるようにしてほしい」という切実な声が上がったため、その声に速やかに応えるため、おこめ券が選択肢に入ったのは当然でしょう。一人当たりの年間消費量は減っているとはいえ、やはり日本人にとってお米は大切な主食です。
にもかかわらず、一部の自治体の首長は会見やSNSで「うちは絶対におこめ券を配らない」「鈴木農水大臣には屈しない」と、まるで政府や農水省、鈴木農水相がおこめ券の配布を強要しているかのように伝える始末……。実際にどんな支援策を採用するかは、それぞれの自治体が自由に選ぶことができます。いたずらに分断を煽ることが政治家としてとるべき行動でしょうか。甚だ疑問だと言わざるを得ません。

