マーケットの啓蒙にもかなり投資した
同じような商品を、顧客と仲良くなることで売っているだけでは限界がきていた。それよりは、おもしろそうな会社を発掘して、その会社の採用を支援することだった。そのため、マーケットの啓蒙にもかなりの投資をした。
社員を雇用すれば、年に一人500万円くらいはかかるわけだから、10年で5000万円の出費である。新規採用費ゼロでも5000万円を払うことを考えれば、採用に200万円の経費をかけたとしてもトータルで5200万円の買い物だ。それであれば優秀な人材を採ったほうがいいのではないか。
そのためには、まずは社長を説明会に引っ張り出すことだった。社長が直接話して、直接口説く。給料がいくらかとか、仕事内容が何かという前に、社長のビジョンで学生をひきつけよう。取引先は小さな会社ばかりだったので、ほかのものでは大企業に勝てない。私たちがつくった合同ダイレクトメールのメッセージも、「社長に会わずに、何が就職活動だ」というものだった。
社員を巻き込んで、リクルーターとして育てることもした。そうすると、やはりいい人材が採れるだけでなく、自分自身が面接をすることで、本人もその会社で働く意義やビジョンを考えるようになり、組織も強くなる。
それに人事担当者の多くは、自分たちの仕事は選考だと思っているが、いくら面接をしても、エントリーの段階でいい人材が集まっていなかったら、意味がなかった。実際、同じように考える企業が何社もあったから、私たちの事業も成り立っていたのだろう。
私は、いい人材を集めて、マーケットで知名度を上げ、そのマーケットに投資していけば、売り上げというのは、いくらでも伸びるものだと思っていた。
キャッシュフロー経営を信奉していたし、極端な話、利益なんか残らなくても、優秀な人材がいて、会社の知名度とかブランド力が残れば、売り上げや利益はいつでもつくれると信じていた。
00年に7億だった売り上げが、03年に15億、04年には3倍の20億円になっていた。だが、利益でいえば1億円くらいしかなかった。たったの1億ではマーケットへの投資などできるはずがなかった。
そのころ、銀行からは融資の提案がきていた。こちらとしても借りられるのであれば借りるし、銀行も積極的に貸したがっていた。