「ベジタブル・ファースト」は本当に健康的なのか
「ベジタブル・ファースト」という食べ方が話題となったのは、日本糖尿病学会誌『糖尿病』(2010年5月号)に掲載された2本の論文がきっかけでした。これらの論文では、白ご飯を食べる10分前に野菜サラダをとると、血糖値の急上昇が抑えられるという結果が示されていました。
そこから「食事の最初に野菜を食べるのが正解」という情報が広まり、ダイエットや糖尿病対策の定番となっていきました。
私たち研究者にとって、流行の健康法を科学的に検証するのは大切な使命です。そこで、「野菜を先に食べるだけで本当に血糖値は下がるのか?」を確かめるため、千切りキャベツを使った実験を行ないました。
被験者は20代の健康な男女10名。「白米のみ」「白米+キャベツ50g」「白米+キャベツ100g」の3パターンで血糖値の上昇を比較しました。キャベツは白ご飯を食べる5分前に摂取しています。結果は、なんと3つすべてがほぼ同じカーブを描き、血糖値変動曲線に大きな差が見られなかったのです。
中高年ほど日々の健康に役立てられる
一方、同様の実験を30~40代の健康な男女に行なったところ、血糖値のピーク値が20mg/dLも抑制されるという結果が出ました。
この年齢による差の要因として考えられるのは、「消化力」や「インスリンの働き方」の違いです。若い世代は消化吸収力に優れ、インスリンも効率よく分泌されます。
しかし、加齢とともにインスリンの分泌量や感受性も低下していきます。
この加齢による体質の変化が、年齢とともに血糖値が上昇しやすくなる一因と考えられます。
ちなみに、私たちの研究は、大学生たちと共同で行なうため、被験者の多くは20代の健康な若者です。そのため、若い世代では数値の差が出にくいという特徴があります。
裏を返せば「若い世代で効果が出た方法は、中高年にとってはさらによい結果を得られる」ということです。つまり、研究で得られた知見は、年齢が高い人ほど日々の健康管理に役立てやすいのです。

