相手から信頼を得るにはどうすればいいか。早稲田大学名誉教授の内田和成さんは「他人事の提案で、人を動かすことはできない。もし『上司が自分のことを理解していない』とか、『自分が言っていることを相手に聞いてもらえない』と思うなら、逆に自分が、どれだけ相手を理解しようとしているのかを、一度考えてみるといい」という――。

※本稿は、内田和成『客観より主観 “仕事に差がつく”シンプルな思考法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

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その経営者は「利益」と「成長」のどちらを重視しているか

「相手の価値観を理解しようとする」ことは、ビジネスパーソンの基本だ。

実際、私がコンサルタントとして仕事を受けていたときも、相手の経営者がどのような価値観を持っているか見極めることを、かなり重要視していた。

というのも、相手の価値観によって、提案すべき内容や提案の仕方が、まるっきり変わってくるからだ。

この「価値観の違い」のわかりやすい例として、その経営者が「利益」を重視しているか、「成長」を重視しているかという問題がある。

「どちらでも大差ないのでは?」と思う人もいるかもしれないが、実際のところ、こうした価値観の違いは、その企業の経営方針や意思決定に大きな影響を及ぼす。

たとえば、新商品が好評で、店舗からの注文が殺到しているようなケースを考えてみよう。

その場合、利益を重視する経営者は、「どれだけお客さんが商品を実際に購入しているか」を、絶えず気にするだろう。

というのも、いきなり売れなくなってしまったら、すでに生産した分が無駄になる可能性があり、会社の利益が下がってしまうからだ。

在庫切れで商品が不足しても、売れ残るよりはいい。こうした経営者は、とにかく堅実で、「損をしないこと」を優先する。需要が大きいのであれば、いまある商品を値上げして、より儲かるほうに振ることを考えるかもしれない。