客観的な視点を持つには、どうすればいいか。早稲田大学名誉教授の内田和成さんは「『主観と主観の重なり合ったところに“客観”が生まれる』というふうに発想を切り替え、相手側の立場を理解し仮説を立てて考える姿勢が必要になる」という――。
※本稿は、内田和成『客観より主観 “仕事に差がつく”シンプルな思考法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
客観性の危うさを諭す「ネパールの木彫り人形」の話
本稿では、「相手の主観を突き止める」方法について説明していこう。
ここでポイントとなるのは、あなたが「正しい」と思っている常識や価値観は、別の人にとっては「正しいとは限らない」ということだ。その「正しさ」とは、あくまであなたにとっての正しさであり、万人に当てはまるものではない。
ここをはき違えてしまうと、自分の価値観や考えを相手に押しつけてしまい、結果的に「相手の主観」を正しく見つめることができなくなってしまう。
そんな教訓を含んだ例として、私がその昔、人から教わった大好きな小話がある。アメリカ人の旅行客がネパール人の職人と、人形の売買をめぐって交渉をする話だ。
ヒマラヤ山脈の山道に、木彫りの人形を売っている1人のネパール人の職人がいた。
通りがかったアメリカ人の旅行者が見ると、10個の人形があるようだ。旅の土産にちょうどいいと思い、彼は職人に交渉を持ちかけた。
「どうだろう? その人形全部と、あと2個、合計で1ダース買うから、安くしてくれないか?」
すると職人は、こんな返事をした。
「とんでもない。この10個ならば安くしてもいいけど、あと2個追加するなら、値段は逆に高くなるね」
お客がせっかく追加で商品を買おうとしているのに、職人はどうして値上げをするなどと言うのだろう?
理由は単純で、人形は手元に10個しかないので、12個を売ろうと思ったら、職人は家に帰って、人形をさらに2個つくらないといけない。余計な労力がかかるから、値段は高くなるというわけだ。

