客観的にものをみるには何を意識するべきか。早稲田大学名誉教授の内田和成さんは「同じものを見ていても、その『ものの見方』には、必ずどこかに歪みがあり、それが両者のすれ違いや、意見の食い違いを生む。だからこそ、『自分も相手も客観的ではない(なりたくてもなれない)』という視点を持つだけで、そうした不和が驚くほどあっさり解消されたりする」という――。
※本稿は、内田和成『客観より主観 “仕事に差がつく”シンプルな思考法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
人間の意思決定は「フレーム」で変わる
本書では、「相手の価値観に寄り添う」視点を持つことは、非常に重要だと解説してきた。では、どうやって、その相手の価値観を突き止めればいいのか。
その説明に入る前に、ここでは少し、人間の「認知の歪み」に関する話をしたい。
人間のものの見方というのは、必ず何かしらの「バイアス」がかかっている。
ゆえに、自分では「客観的にものを見ている」と思っていても、どうしてもどこかに偏りが生じてしまう。
ここで、行動経済学や心理学でよく引用される「タバコと神父」の話を例に挙げてみよう。
若い神父が告解の場で、上司の神父に質問をした。
「タバコを吸いながら、お祈りをすることはできますか?」
当然のごとく、「不謹慎だからやめなさい」と、上司の神父は若い神父を叱った。
ところが別の若い神父が、今度は上司の神父にこんな質問をした。
「私は心の弱さから、祈りのさなかにタバコを吸ってしまった。そんな自分を悔い改めるため、すぐに祈りを捧げてもいいでしょうか?」
すると、上司の神父はこう言った。
「悔い改める祈りならばよいだろう」
考えてみれば、どちらの若い神父も「タバコを吸いながら祈っている」という点では同じである。にもかかわらず、前者は喫煙という行為が「神聖な祈りの妨げ」というネガティブな文脈で捉えられ、後者は「懺悔のきっかけ」というポジティブな文脈で解釈された。
このように、同じ情報でも提示の仕方(フレーム)を変えるだけで、人の意思決定や判断に影響を与えることがある。この現象を「フレーミング効果」と言う。
人間の意思決定というのは、こんなささいなことで、簡単に変わってしまうのだ。

