コミュニケーションのすれ違いをなくすためにはどうすればいいか。早稲田大学名誉教授の内田和成さんは「『言葉』だけのコミュニケーションで、互いの主観の違いを理解するのは、なかなか難しい。『何がどうズレているのか』を可視化し、互いにそれを認識できるようにするには、『情報理論の図』を用いるといい」という――。

※本稿は、内田和成『客観より主観 “仕事に差がつく”シンプルな思考法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

後ろで夫が寝ている、ベッドで泣く女性
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「例の件どう?」で話が通じる理由

コミュニケーションを行う人同士の間で、共有されている知識や情報が少ないと互いの主張はすれ違いやすくなり、逆に共通項が多いほど情報の伝達はスムーズになる。

この共通項に関しては、同じ会社の同僚や友達など、同じ環境に身を置いていたり、一緒に過ごしている時間が長い人ほど多くなる傾向がある。ゆえに、身近な人間同士であるほど、「スムーズなコミュニケーション」は発生しやすい。

たとえば、社内で新しい部門を設立するための大きなプロジェクトが動いていたとしよう。そのプロジェクトに携わっている私が、別部署で関わっている田中さんと、たまたまトイレで出会った。

「田中さん、例の件どう?」
「実はその件、うちの常務が反対していて、えらい目にあっているんですよ」

こんなふうに、「例の件」で話が通じてしまう。

これはひとえに、互いが同じ情報や前提を共有しているからできることだ。先の情報理論で言うところの「重なり」がこの2人は大きいということで、それだけの距離の近さがあれば、プロービングを行う必要もない。

当たり前のように思うだろうが、たとえば街中の公衆トイレで会った人に、「例の件どう?」などと声をかければ、下手をすると警察に通報されてしまうかもしれない。

それくらい私たちにとって、「共有している前提」や「相手との距離」は重要なのである。