再婚の父親と初婚の母親、ひと回り上の姉
九州在住の上村七香さん(仮名・50代)は、父方の祖父母と両親、姉の6人家族で育った。両親は共通の知り合いの紹介で出会い、父親が31歳、母親が29歳の時に結婚。父親は23歳の時に22歳の女性と最初の結婚をしており、女性は23歳の時に娘を出産したが、まもなく卵巣がんが判明。入退院を繰り返し、娘が小学校の低学年の頃に死去。幼い娘を抱えた父親と結婚したのが、上村さんの母親だった。
入退院を繰り返していたため、実母との生活がほとんどなかった娘は、すぐに新しい母親に懐き、12歳差の妹である上村さんをかわいがった。
「田舎の小さな運送会社を経営していた父は、従業員に慕われ、どんな場面でも中心的な役割を担い、頼りになる自慢の父でした。専業主婦の母はクールな人で、今思うと決して愛されていなかったわけではないのですが、子どもの頃は自分が愛されていないと感じるほど愛情表現が薄く、冷静で芯が強い人だったと思います」
父親の最初の妻ががんで入退院を繰り返していた頃は、祖父母が家事や姉の育児を担っていた。その後父親が再婚し、上村さんの母親が家に入ってくれたおかげで、祖父母は家事や育児から解放された。そのため、祖父母は上村さんの母親にとても感謝したという。
「私が小学校3年生の時に祖父母が立て続けに入院して、祖父が82歳で、その翌年に祖母が83歳で亡くなりましたが、当時は同級生の祖父母と比べて、『どうしてこんなに弱っているのだろう』と不思議に思っていました。でも後で、私と姉が、一回り年齢が離れているように、『祖父母も両親も、同級生より年上なんだ』ということに気がつきました」
上村さんが小2〜3年の頃、仕事が忙しい父親は、夜遅くに帰宅して、朝早くに出勤してしまう。自宅ではよくタバコをくゆらせていた。母親は、入院していた祖父母に泊まり込みで付き添うことが多く、ほとんど上村さんと一緒にいられなかった。そのため、上村さんは寂しい思いをしていた。
姉は、上村さんが3歳の時に高校の寮に入っていた。上村さんにとって姉は、「夏休みや冬休みに帰ってくるお姉ちゃん」だった。
「姉と暮らした記憶が私にはなく、帰ってくるのは楽しみにしていましたが、年齢が一回りも違うと共通の話題もなく、一般的な『姉妹感』が、私にはわかりませんでした。私にとって姉は、美人で、大人で、自慢の人でした。姉のことは大好きでしたが、遠い存在だった気がします」
家族仲は悪くなかったが、父親の仕事が忙しかったため、家族で出かける先は母親の実家くらいだった。
「私が小学校低学年の時、友達の親御さんに、『お姉さんとあなたは血が繋がっていないんだよ』と言われたのですが、私はショックを受け、泣きながら母に確認した記憶があります。その時初めて腹違いの姉であることを知りました」
高校を卒業後、福岡市内で一人暮らしをしながら短大を出た姉は、会社の受付の仕事に就くと、上村さんが小6の時に結婚。父親は相変わらず仕事が忙しく、母親は姉の第1子出産後のサポートのために、福岡市内の姉の家に行ってしまったため、上村さんの中学校の入学式は1人だった。

