「アフター5」という言葉が死語になった今も、終業時間とともに「ご飯いこうよ」とか「一杯どう?」と頻繁に誘ってくる人がいるものです。声がかかるのは嬉しい反面、たまにならいいのですが、週に何度もとなると、正直ウザい。しかし相手の気持ちを思うと、なんとなく断りづらいもの。そんなとき、カドを立てることなく、上手く断るにはどうすればいいか、そのコツをお教えします。

上司の誘いはメリットの有無で判断せよ

令和になり、しかもコロナ禍、アフター5という言葉はもはや死語ですが、今でも毎夜のごとく飲みたがる人はいます。

感染の懸念もあり、なるべくならどこにも寄らないで家に帰りたいところですが、相手が上司だと断りにくいですよね。

しかもあなたひとりが毎回、ターゲットになっているとしたら、よけいに断りにくいわけですが、ちょっと待ってください。いつも自分だけに声がかかるのだとしたら、何とか対処の仕方を考えたほうがいいかもしれません。

あなたは特別に気に入られていると思っているかもしれませんが、もしかしたら他の人は断っていて、あなただけが断っていないだけかもしれません。つまり、誘いやすいだけの人になっている可能性があります。もしそうなら、自分の時間を犠牲にする甲斐がないというものです。

ですから、もし上司から声がかかったときは、その上司と付き合うことにメリットがあるかを見分けることをお勧めします。メリットとはどういうことかというと、その上司との会話から学ぶことがあったり、その上司が本当にあなたに目をかけてくれて、仕事上も何かと便宜を図ってくれる存在だったりするかということです。

そういう上司なら、いい関係を維持するためにも、多少は自分の時間を犠牲にしてでも付き合うのがいいと思います。もちろん頻度が高すぎるなら、何度かに一度は「都合が悪い」と断ることも必要です。断ることで、度が過ぎていることを相手に悟ってもらうように仕向けるわけです。暇な日でも、何回かに1回は断ったほうがいいでしょう。

逆に、付き合ってメリットがない上司、たとえばただ愚痴と自慢話を聞かせて、自分がすっきりしたいために誘ってくるような上司であれば、断っても構いません。というより断るべきでしょう。

ただし、断る理由には気をつけてください。「友達と約束がある」程度の理由だと、「上司とどっちが大事なんだ」と気分を害すかもしれません。

ありがちなのは「取引先と約束がある」というウソですが、会社がらみだと上司は調べられますから、簡単にバレます。後で「取引先に聞いたけど、そんな約束なんてしてないと言ってたぞ」と言われ、根に持たれる危険があります。

たとえば「子どもの用事」とか「妻との約束」など家族の用事だと、上司も無理が言いづらく、調べようもありません。もし家庭がない人なら、親の具合が悪くなったことにしてもいいでしょう。

それ以外にも、たとえば同窓会があって幹事をやっているので欠席できない、というふうに、自分が絶対に出なければならない用事を伝えるのもよいでしょう。

このように、嘘をつくなら、上司が調べられない理由を用意しておく周到さが必要です。

会社の問題は勤務時間に解決すると伝える

部下が頻繁に誘ってくることもあるでしょう。基本的にはおごってもらいたくて誘ってくるのでしょう。ちゃっかりしてますが、部下は部下で「上司は部下の面倒をみて当然」と思っている可能性もあります。

こういう部下には、飲みの話には乗らない人間なんだと意思表示をする必要があります。帰宅後も勉強や趣味で忙しく、暇ではないことを伝えましょう。

そのうえで「会社のことは会社の中で解決しよう。何かあれば、勤務時間中に相談に乗る」と言っておけば、けっして拒否しているわけではないことが伝わります。

上司の役割云々という部下には「上司部下の関係を勤務時間外まで持ち越したくない」と、自分のポリシーとして伝えるのもいいでしょう。

もちろん言った以上は、部下によって分け隔てをせず、誰に対しても一貫した態度を貫くことが前提です。部下によって差をつけると、不信感のもとになりますので注意してください。

「職場のみんなで一緒に」は“変わり者”を演じて回避

会社でよくあるのは、職場のみんなで一緒に……という誘い。たとえば所属した部署が一緒にランチに行くのが慣習で、同僚が執拗に誘ってくるといった場合は、断りづらいものです。

一緒に参加できるならそれに越したことはありませんが、そういうことが苦手なのであれば“変わり者”と言われてもいいという覚悟で断るしかありません。

言い方としては、「朝の仕事を振り返る時間がないとダメなタイプなんだ」とか「休憩時間はぼーっとしてリフレッシュしないと午後身が持たないんで、お昼は一人で過ごすよ」といった感じで、少し下手に出て断るのがいいでしょう。

しょっちゅう外食したがる妻には「その分、働いてくれる?」

では、家庭でも妻が頻繁に外食をしたがる場合はどうでしょうか。それもどうやら食事の用意が億劫だからという気配が濃厚だとしたら。

この場合、問題は2つあります。1つは、専業主婦でありながら食事の用意をしたがらないということ。そしてもう一つは、経済的に負担がかかってしまうことです。

世界に比べて日本では、専業主婦の地位が高いと言われています。夫の稼ぎを妻が預かり、家計を切り盛りするというスタイルは日本くらいのもので、多くの国ではお金の管理はお金を稼いだ人がするのが当たり前です。

ただでさえ日本では妻の立場が強いうえに、最近では共働きが広まり家事や子育ても夫婦で分担する風潮が広がってきたのに便乗して、専業主婦が夫に家事の平等な分担を強いるようにもなってきて、ますます妻の立場が強まっています。しかし専業主婦が食事の用意をしたくないというのは、怠慢以外の何物でもありません。

そういう妻を選んだのは自分と諦めるほかないのですが、そうも言っていられませんよね。

このケースの場合は、家計の面から諭すのがいいでしょう。「これだけ外食を続けていると、僕の給料だけではとても足りないから、君もその分、働いてくれ」と伝えるのがいいと思います。外食がしたかったらその分、働いてくれという言い分で説得するのです。働きたくなければ少しは外食を控えるようになるはずです。

家事全般を嫌がるようなら、「僕が今日は会社に行くのは嫌だからといって、さぼったり会社をやめちゃったりしたら困るでしょ。お互いに頑張ってやっていこうよ」と諭して、考え方を改めてもらうのも大切ですね。

外食も飲み会もたまにだからいいので、度を超えるようでは困ります。職場でも家庭でも、相手が納得する理由で断ることが大切です。

(構成=大島七々三 イラストレーション=髙栁浩太郎 撮影=宇佐美雅浩)