200年以上続く「模合」の文化とは
沖縄の例を見てみる。
沖縄県は、世界屈指の長寿地域として知られており、100歳以上の長命高齢者が多数暮らしている。以前、アメリカのニュース誌『TIME』で、「100歳まで健康で長生きしたければ沖縄のライフスタイルに学べ!」という特集が組まれたほどだ。
沖縄には「模合」という文化がある。これは複数の個人がグループを組織して、毎月集まって一定のお金を出し合い、必要な人から順に集まったお金を使っていくという助け合いのシステム。遡れば200年前の琉球王国時代から伝わる、「人と人とのつながり」の文化だ。
私の知人の80代の女性も模合に参加している。夫を数年前に亡くして以来、ひとり暮らしをしているが、模合のメンバーがしょっちゅう自宅に様子を見にきたり、遊びにきたりしてくれるので寂しくないという。
彼女は数年前に心筋梗塞で入院したとき、模合で集められたお金を入院費に充てている。素晴らしいのは、彼女にそのお金を使う罪悪感がないことであり、参加メンバーたちも当然だと思っていることだ。
困ったときに助け合うのが、当たり前なのだ。
積み立て以上に大切なのは「会う」こと
彼女はいつも笑っているし、模合のメンバーのことを必要としているし、自分が必要とされていることも知っている。その模合に参加している60代の女性は、まだ小さな孫の面倒を、彼女に見てもらったりしている。
模合で積み立てられたお金は、病気のときにだけ使われるわけではない。たとえば学校の同級生たちが作った模合では、メンバーの子供が入学式を迎えるときに制服代として使われることもある。その際、子供が成長していく様子をお互いに報告したり、悩みがあれば相談したりもする。
沖縄の人たちにとって当たり前のこの文化が「つながり」を生み、維持され、そこに付き合いと生きがいが醸成されていく。
じつは日本の他の地域にも「たのもし講」などと呼ばれるお金を出し合う文化があったが、第二次大戦後に急速に減少していった。それらと沖縄の模合の決定的な違いは、単にお金を積み立てるのか、皆が集まって「親睦」を行うかだ。
親睦を定期的に行っている沖縄の模合は今もしっかり文化として根付き、お金を集めることに重きを置いていた他地域のシステムは銀行に取って代わられた。
大切なのは「会う」ということだったのだ。