頼れる同僚がいないことのリスク
ここで、もうひとつ研究データをご紹介しておこう。
テルアビブ大学のアリ・シローム教授が率いた研究は、長期にわたる追跡調査によって、職場環境と死亡率の関係について明らかにした。
研究チームは1988年に成人820名に対して標準的な健康診断を行い、その後20年にわたって彼らを追跡調査した。この間、被験者たちに対して「職場の状況」について聞き取り調査を実施。あなたに対する上司の態度はどうか? 同僚たちは友好的か? といった内容だった。
同時に、血圧や禁煙習慣、抑うつ状態の有無など、健康状態についても詳しくチェックした。
その結果、上司の友好度と死亡率にはほとんど影響がなかった。一方、同僚との友好度が低い被験者ほど高い死亡率を示すことが明らかになった。職場で「仲間からの社会的サポート」をまったく受けていない、またはほとんど受けていないと感じていた人は、受けていると感じた人に比べてなんと2.4倍も死亡率が高かったのだ。
仕事をしている人なら、誰でもなんらかのストレスを抱えるものだ。そんなときに「仲間」からのサポートを得られているか、得られていないかはとても重要になる。同僚たちから支援されていると感じた人たちは、「つながり」による力強さと安心を得られ、それが寿命にも影響したということだろう。
100歳地域「ブルーゾーン」の秘密
世界中の研究者が「つながり」と「長寿」の関係について調べてきて、両者は密接に関係しているという報告が多数ある。
さらに、「つながり」は長寿をもたらすだけではない。
そこには「生きがい」が生まれるのだ。
イタリアのサルデーニャ島、日本の沖縄、アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコジャ半島、ギリシャのイカリア島。この5地域は100歳以上の長寿者が多く、「ブルーゾーン」と呼ばれている。
ブルーゾーンという言葉は、ベルギーの人口学者ミシェル・プーランとイタリア人医師ジャンニ・ペスが、長寿者の多い地域に「青色マーカー」で印をつけたことに由来する。
ブルーゾーンの5地域を見ていくと共通するのは、植物性の食事を中心にしていること、日常の中に立ったり、座ったり、登ったりといった運動が習慣になっていることなどが挙げられるが、そこに「つながり」という重要なファクターが見てとれた。