14億4000万人という世界1位の人口を抱えるインド。名目GDPは世界5位で、日本のすぐ後ろに迫るほど急激な経済成長を遂げている。インドで生きる人々にはどのような特徴があるのか。デリー駐在の日々を綴り、2024年のnote創作大賞に入賞したインド麦茶さんの記事「インド民の代表的言い訳とその対応」を紹介する――。
エローラ石窟群
筆者撮影
エローラ石窟群

とにかく、とにかく「言い訳」が多い

インド民はとにかく何かにつけて「言い訳」を唱えてくる。

まず、インドに着任してイライラするのはこのインド民のコミュニケーションモードである。これはインド民の自己防衛本能の一種であるが、実際に部下や取引相手として対峙した場合にはなかなか手ごわい。

その結果、彼らとの議論が面倒臭くなり、適当にやり過ごし、こちらが相手の主張を呑み込んでしまった場合、インド民は、「やはり俺が正しかった」と本気で思いこむ。よって、議論や責任を有耶無耶にすることは、長期的に見れば相互に誤解を生むことになり、結果として逆恨みや約束の不履行などに繋がる。

相手が部下であれば、あなたは彼や彼女をコントロールできなくなるだろう。何しろ、あなたが追及をやめれば、相手は自分が受け入れられたと考えるからである。日本人であれば、無理筋な自らの主張を理解して、心のどこかで良心の呵責が発生することを期待できるかもしれないが、インド民はそのようなことは望めない文化コンテキストの中にいる。

頼んだことをやっていなければ面倒がらずに戦う

我々日本人が意識しなければいけないことは、それぞれの議論という、「局地戦」で勝利することであり、面倒がらずにインド民に対して指摘と戦いを挑んでいくことである。このような日々の局地戦の勝利なくして、全体の勝利はない。これはあなたがインドにおいて払わなければならないコストの一つである。

我々がインド民に何かの依頼をし、それが履行されていない場合や、失敗した場合には、再度それを実行させるか、補償をさせるか、何かしらのアクションを相手にとってもらわなければならない。その際に相手の「言い訳」という防御を突破できなければ、結局はあなたやあなたの家族が損を被る。だからこそ、我々外国人はインド民が展開するこれらの特徴的な議論を粉砕し、自分の身を守る術を学んでいないといけない。それが個人の生活を守り、会社の利益を守る。

局地戦で勝利するためには、三つの要素を持っている必要がある。一つ目は、ロジカルシンキングの基礎体力、二つ目は、その問題に関する真っ当な主張、そして三つ目が、インド民が繰り出してくる独特な戦法に関する事前知識である。

一つ目と二つ目については、相手が誰であっても必要になる基本的な要素であるが、三つ目についてはインドでしばらく過ごさなければ、構造的な理解に達することができず、結果としてインド民得意の議論に巻き込まれて不利益を被ることになる。