頼み事が上手な人はどんな伝え方をしているのか。コピーライターの藤田卓也さんは「人は言葉の裏側をつい探ってしまう。相手の不安や疑問をこちらが取り除く伝え方をするのが大切だ」という――。

※本稿は、藤田卓也『伝え方で損する人 得する人』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

障害のあるビジネスウーマン
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「やってもらって当たり前」の考えは捨てる

職場でもプライベートでも日夜発生しているのがこの「お願い」でしょう。伝え方の基本中の基本ですから、あらゆる場面に応用していけるものです。

まず注意すべきなのは、マインドです。「仕事なんだから、頼み事はやってもらって当然だ」と心のどこかで思ってはいませんか?

何かを伝えるとき、言葉を選ぶのはあなた自身。こうした上から目線なマインドを抱いていると、それは顔や態度に出なくても言葉に出ます。

もし本当にお互いが「やって当然」と思っているのなら、そもそもお願いなんて丁寧なステップを踏む必要はないはずです。やるべきタスクをそのまま共有すれば事足ります。

お願いしなければ、という状況にいる時点で、やってもらって当たり前という考え方は捨てましょう。

お願いによって相手が動いてくれれば、あなたはきっと嬉しいでしょう。例えばプロジェクトに協力してもらえたり、資料ができあがったり、時間がもらえたりとあなたにとって嬉しいリターンが返ってくるからです。

お願いする場面こそ等価交換を意識する

これはつまり、ギブ・アンド・テイクという観点で見れば、あなただけがテイクしている(受け取っている)状態です。こんな不均衡な状態では、ただお願いしただけで相手のモチベーションが高まるはずがありません。何度かは「仕事だから」としょうがなく引き受けてくれたとしても、長続きしません。

お願いする場面こそ、等価交換を意識しましょう。お願いする相手へ、自分も何か提供できないかを考えてみる。このほんのひと手間で、相手のモチベーションは大きく変わります。

お願いする代わりにこちらも別の仕事を担当する……ということではありません。これでは「私もやってるんだから、あなたもやってくれ」という無言の圧力でしかありません。

代わりに提供するのは、フィードバックやアドバイス、目標といったものです。いわば、ポジティブなパス。相手のスキルに対するポジティブなフィードバックであれば、仕事に対するモチベーションにつながります。短期的で具体的な目標であれば、スムーズなキックオフに役立つでしょう。中身が曖昧になりやすいお願いであれば、明確な目安を数字で伝えるのもいいでしょう。相手にとって、一気に想像しやすくなるはずです。