一部社員の「アピールの場」にならないために

対照的に、失敗するランチ会では、目的が曖昧なまま開催されることが多いです。例えば、「とりあえず社長が言い出したから」という理由で始まったランチ会では、社員もその意図を理解できず、結果として「何のために参加するのかわからない」と感じてしまいます。参加者が少なくなり、数名の社員だけが集まる会となりがちです。また、目的が共有されていないと、社員にとっては「単なる時間の無駄」や「社長へのアピールの場」となり、かえって人間関係の摩擦を生むこともあります。

また、社員のニーズに合わせた配慮ができるかどうかも、成功と失敗を分けるポイントです。成功するランチ会を実施する企業では、社員の食事の好みやライフスタイルにも配慮し、ダイエット中の社員には選択肢を広げるなど、柔軟な対応を行います。

さらに、ランチ代の一部を会社が負担するなど、目に見えるメリットを提供することで、参加しやすい環境をつくり出しています。このような工夫は、「会社が社員のことを考えてくれている」というメッセージを伝える効果もあり、社員の満足度を高める要因となります。

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場を回す「リーダーシップのある社員」がいればベター

一方、失敗する会社では、社員の状況や意見を無視した強引な進め方が目立ちます。ランチ会に何の特典もなく、あくまで「参加するのが当然」という雰囲気が漂うと、社員は負担感を感じるようになります。また、特定のメンバーばかりが楽しむ内容に偏りがちで、結果として社員全体の求心力が低下し、コミュニケーションの活性化には繋がりません。

例えば、社長の好みだけでメニューを決めたり、社員が苦手な内容の会話ばかりが続くと、次第に「ランチ会に参加したくない」という空気が広がります。

最後に、主要な社員を巻き込めるかどうかも、成功と失敗の大きな違いです。成功する企業では、ランチ会を始める際にリーダーシップを発揮できる社員を巻き込み、彼らが自主的にランチ会を盛り上げる役割を担います。これにより、社長だけが発信するのではなく、社員同士が互いに話しやすい雰囲気が生まれます。

また、業績が好調なタイミングでは、仕事に関連するテーマも話題として許容され、未来に向けたビジョンを共有する場としても活用できるため、より前向きな話ができるのです。

このように、ランチ会の成否は、その準備段階と進行方法に大きく左右されます。目的を明確にし、社員のニーズを尊重すること、そして主要なメンバーを巻き込みながら、全員が心地よく参加できる場を作ることが、成功の秘訣となるでしょう。