多くの人が「奥まで詰めない」本当の理由

もちろん1の状態になれば最高だが、せめて2の状態でいたい。3になるのだけは避けたい。そんな心理が働く。では、この3の状態に陥りやすいのはどこかと言うと、図の「C」の部分だ。座席前のずらっと並んだつり革は遠いし、前からも後ろからも人のプレッシャーがある。どっちを向いて立っていればいいのかすらよくわからない。

こんな不安定な場所こそが、車内アナウンスで言うところの「奥のほう」なのだから、そこに行きたくないと感じるのも当然のことだ。従って乗客は奥に詰めない。

となると、図の「C」の部分を少しでも快適にすることが、車内の「奥まで詰めない」問題を解決することにつながらないだろうか。

次にステップ2、実際にどのような分け方があるだろうか。イスの数と床の比率(分け方)を変える。ドアとドアではない部分の比率(分け方)を変える。2階建て車両のように空間を上下で分ける。乗客の乗車料金を分ける。乗客を降りる駅で分ける……。

できるかできないかにこだわらず、ユニークな分け方はないだろうかと空想することが大切だ。

混雑を生み出している人は「座り方」に問題がある

最後にステップ3。今回の目的は奥にいても快適にすることだ。そこで実際に次の図のように、車内の床を3色に、たとえばイエロー(A部分)、オレンジ(B部分)、グリーン(C部分)に分ける方法はどうだろう。色を分けるだけで何が変わるのかと思うかもしれないが、これは意外に効果的だと思う。整列乗車の位置がホーム上に色分けして示されていたり、エスカレーターのステップの端が黄色くなっていたりする。

まず、座っている人の足のポジションを明確にできる。これがAの部分だ。座り方や足の長さは人それぞれで、ときおり足をかなり前のほうに出している人を見かける。そうなると、その前に立つ人は、ポジションをやや後方に下げざるを得なくなり、左図のBとCの境目あたりまで押し出されることになる。その人も不自由な体勢を強いられるし、当然Cのポジションの人は窮屈になる。

乗客のひとりが足を前のほうに置くだけで、このような負の連鎖が起こるのだ。こういう連鎖は、車内のあちこちで見られる。

そこで、図のように床を3色で分けることによって、足をどこに置くべきかが明確にわかりやすくなる。

そうなれば、座っている人は足の出しすぎに気を遣うだろうし、B部分で立つべき人の足がC部分に飛び出していれば、C部分で立っている人は「すみません、少しずれていただけますか」と言いやすいのではないだろうか。