黄色い線、緑の位置…と色別にアナウンスできる
さらに言えば、奥に行きやすいように、電車内のセンターにもつり革をつけてほしい。持ち手のあるつり革でなくても、高さ185センチ程度のところに天井からバーが出ているだけでたいていの人は届くし、それだけで随分と奥に行きやすくなるはずだ(広告がぶら下がっているが、デジタルサイネージを使えばそれも解消できるのではないか)。
実際、私が普段乗っているバスにはそのようなバーがついていて、奥に行くのが随分楽である。
そこで、車内アナウンスもターゲットを分けて放送する。
「車内が混雑してきましたので、お座りの方はできるだけ足元の黄色い線の中に足を入れていただけますでしょうか。つり革をお持ちの方はリュックを前で抱えてできるだけオレンジの位置にお立ちください。センターの緑の位置にお立ちの方は奥のほうまでお進みください。できるだけたくさんのお客様にご乗車いただきたくご協力よろしくお願いします」という感じでアナウンスすれば、乗客のみんなが「自分ごと」として捉えやすい。
集団をいくつかの属性に分けて視覚化する
もちろん、鉄道会社や車内の構造には様々な事情があるだろう。私は門外漢であることも事実だ。ここでお伝えしたいのは、「集団を集団として捉えるのではなく、いくつかの属性に分けて視覚化することによって、解決の糸口が見つかる」ということだ。
会議室、イベント会場、お店、学校などのあらゆるシーンで「動きやすい」を作るために、分け方を工夫した事例はたくさんある。ここからはヒントとなる事例を見ていこう。
数年前に実家の神戸に帰ったときに、母と車で近くのスーパーに買い物に行った。母は高齢ではあるが、近所であれば自分で運転をする。いつものスーパーの近くに新しい別のスーパーができたので、そちらに行ってみようと提案したが、母は「駐車スペースが狭く感じるので行きたくない」と言う。
なるほど、ちょっとしたことだが、駐車場の「幅」ひとつで「入りにくい」「行きにくい」という心理状態を作るのだと実感した。
榎本篤史著『すごい立地戦略』によると、駐車場の形や入口の位置等のちょっとしたちがいで「集客効果」に大きな影響があるそうだ。たとえば最近増えている「U字形の二重線」で分けられている駐車場のほうが、「一本線」で分けられている駐車場よりも「停めやすい」と感じる人が多い。実際にはその分、駐車スペースが狭くなっているはずだが、隣との距離が開いているように感じるためだという。