日々のささいなストレスはどこから生まれてくるのか。コクヨコーポレートコミュニケーション室長の下地寛也さんは「混雑や長蛇の列など、人が思うように動いてくれない状況に遭遇すると小さなストレスが溜まりやすい」という。『「しやすい」の作りかた』(サンマーク出版)より、一部を紹介する――。
ラッシュアワーの列車の中
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鉄道会社の社員になりきって考えてみよう

私は仕事でもないのに、電車に乗ったり、街を歩いていたりするときに、人が思うように動いてくれない状況を見るとどう分ければ動きやすくなるだろう、と思考シミュレーションをする癖がある。満員電車、長蛇の列、オフィスのフリーアドレスの座り方、お店の部分的な混雑など、「思ったように動いてくれない問題」はあちこちにある。

頭の体操に、ひとつ思考実験をしてみよう。あなたが鉄道会社の社員だとする。目下の課題は、満員電車で「乗客がドアの近くに密集して奥まで詰めてくれない」ことだとする。さて、「分け方」を変えることで、この問題を解決する方法を考えてみてほしい。

満員電車には様々な人が乗っていて、奥まで動きにくい問題を引き起こしている。

座っている人の足が邪魔になる。
リュックを背負っている人がいて奥に行けない。
近くにつり革が見つからずに、ねじれた姿勢のまま耐えている人がいる。

不自由と各自の思惑が渦巻く環境。それが満員電車だ。

「動きにくい」に満ちた環境を「動きやすい」に変える

電車が混んできても人は入口近くに溜たまる傾向にある。自分は比較的すいている所まで行きたいと思っても、その動線上に立っている他の誰かに動く意思がなければそれはできない。車内に響く「奥のほうへお詰めください」というアナウンスは、入口付近に断固とどまろうとする人たちの意思によって、意味をなさないものになる。

「動きにくい」に満ち満ちた環境。それが満員電車だ。では、どうすれば人は「動きやすい」に変わるのか。「分け方」で解決できないものか。

そもそも「奥まで人を動きやすくする」ための障害のひとつは、「不安定なポジションに行きたくない」という心理だ。

そこでまずステップ1、乗客の属性を書き出してみよう。主に3種類のポジションになりそうだ。

1、イスに座っている人
2、手すり、つり革を持って安定して立っている人
3、手すり、つり革まで距離があり、安定しないで立っている人