「安倍支持層」だけではない強力な応援団

国会議員に相手にされていなかった高市氏が党員・党友票で首位争いに加わった原動力は、右派メディアをはじめとする安倍支持層の熱狂的な支持である。

安倍支持層はネット界で発信力・拡散力が圧倒的に強く、「本命」の小泉氏や「対抗」の石破氏のネガティブキャンペーンが急拡大した影響も見逃せない。9人が乱立した大混戦で支持が分散するなかで、高市氏を支持する強固な安倍支持層の割合が相対的に増したのも事実だ。

それに加え、株式市場をはじめとする金融界で高市支持が広がっているのも大きい。東京商工リサーチの企業向けアンケートでは、高市氏が24.4%でトップに立ち、石破氏(16.9%)や小泉氏(8.3%)を圧倒した。

金融関係者は「高市氏こそ安倍後継者であり、アベノミクスを必ず継承して株価を上げてくれるという期待感が証券会社や投資家に広がっている。小泉氏や石破氏はアベノミクスを修正して株価を下落させるという警戒感が根強い」と解説する。

右旋回への警戒感…「高市包囲網」の誕生

岸田首相は就任当初、格差是正のための分配政策を重視する「新しい資本主義」を掲げ、金融所得課税の強化も打ち上げてアベノミクスの修正を目指した。株式市場は反発し、株価が急落。岸田首相は一転して一般大衆に投資を奨励してNISAを拡充した。

今回の総裁選では、安倍氏と対立してきた石破氏が金融所得課税の強化を表明して株式市場から警戒されている。小泉氏は規制改革には意欲を示すものの、政策ははっきりせず、株式市場で期待感は高まっていない。それに比べて高市氏は何があってもアベノミクスを継承するという安心感があるのだ。

高市氏躍進に自民党内では警戒感が広がり始めた。

今回はお金のかからない総裁選を目指し、各陣営が党員・党友にパンフレットなどを郵送することを禁じていたが、高市氏が政策リーフレットを大量に送付していたことが発覚。選管が口頭注意したものの、各陣営は「ルールを守れない人にルールを守る政治は出来ない」(茂木敏充幹事長)、「私達が高市さんを支持してると誤解して高市さんに票を投じた例が複数ある」(林芳正陣営)などと収まらず、岸田首相ら執行部が選管に厳正な対応を求める泥仕合となった。

当初は「小泉包囲網」が形成されつつあったが、ここにきて「高市包囲網」が出来上がりつつある。

自民党関係者は「小泉vs.石破の間隙を突いて高市政権が誕生すれば安倍支持層の発言力が再び増大して自民党は右旋回し、裏金問題も棚上げになる。それでは総選挙で大逆風を浴びかねない」と懸念する。