父親そっくりだった進次郎氏の出馬会見
小泉劇場の幕が23年ぶりに開いた。自民党総裁選の出馬会見で小泉進次郎元環境相が「自民党を変える。古い自民党と決別する」と短いフレーズを重ねて変革を訴える姿は、自民党に大逆風が吹きつけていた2001年総裁選で「自民党をぶっ壊す」と絶叫して圧勝した父・小泉純一郎元首相と瓜二つだった。マスコミは進次郎登場にお祭り騒ぎで、総裁レースの本命に躍り出たのは間違いない。
自民党を直撃した裏金事件はかき消されそうな気配である。自民党は再び小泉劇場で息を吹き返すのか。
父はかつて「聖域なき構造改革」を掲げ、「補助金、交付金、税源移譲の三位一体改革」を訴えた。息子は今、「聖域なき規制改革」を掲げ、「政治資金の透明化、自民党改革、国会改革を三位一体で進める」と訴えている。
父は悲願の郵政民営化法案が2005年の国会で否決された時、「郵政民営化が本当に必要ないのか。賛成か反対かはっきりと国民に問いたい」と訴え、衆院解散を断行して圧勝した。
息子は今、「自衛隊が憲法に明記されていないのはおかしいと思いませんか。否決されることがあっても、国民の声を直接聞きたい」と国民投票の実施を公約し、さらには「私が総理・総裁になったら、できるだけ早期に衆院を解散して国民の皆さんの信を問いたい」とも踏み込んだ。
「できるだけ早期に衆院を解散する」
首相の大権とされる衆院解散について、首相以外が言及するのは禁じ手だ。しかも岸田文雄首相(自民党総裁)の後任を決める総裁選はまだ始まってもいない。出馬表明の時点で「総理になったら、できるだけ早期に衆院を解散する」と宣言するのは前代未聞である。
父と息子。何から何まで重なって見える。そして小泉劇場を盛り上げていくマスコミ報道も23年前の焼き写しのようだ。
10人以上が名乗りをあげている総裁選は瞬く間に小泉劇場にジャックされた感がある。マスコミ各社の世論調査でも進次郎人気は急上昇し、すでに一部世論調査(日経新聞とテレビ東京、8月21~22日実施)では石破茂元幹事長を抜いてトップに立った。
やはり歴史は繰り返すのか。進次郎氏、圧勝の勢いである。
43歳で首相に就任すれば、戦後最年少の安倍晋三氏(52歳)ばかりか、明治の初代首相・伊藤博文(44歳)を抜いて憲政史上最年少の首相誕生だ。進次郎フィーバーが過熱し、そのまま解散総選挙へなだれ込む「小泉劇場の再来」が目に浮かんでくる。
進次郎氏は9月27日投開票の総裁選に勝利することを確信し、首相に就任したらボロが出る前に10月解散を断行する決意を固めているようだ。