田中角栄元首相が語った“首相の条件”
マスコミ各社は新政権誕生後の国会で、新首相の所信表明演説や代表質問に続いて予算委員会を開いて与野党が論戦し、その後に衆院を解散して総選挙の投開票日は11月10日になるとの見方を報じてきた。
私は進次郎氏が首相になったら予算委をすっ飛ばして衆院解散を断行し、10月27日投開票に突き進むと予測してきたが、出馬表明時点で「早期解散」を宣言したことは、10月27日投開票の超短期決戦へ早くも世論づくりを始めたとみていいだろう。
田中角栄元首相はかつて首相の条件として「党三役(幹事長、政調会長、総務会長)のうち幹事長を含む二つ、蔵相(現財務相)、外相、通産相(現経産相)のうち二つ」と言った。このハードルを満たす政治家は近年少なくなったが、安倍晋三元首相は幹事長や官房長官、菅義偉前首相は総務相や官房長官、岸田首相は外相や政調会長の要職を歴任している。進次郎氏は党三役の経験はなく、閣僚経験も環境相だけだ。実績不足は否めない。
しかも環境相時代には気候変動問題は「セクシーに取り組むべきだ」、温室効果ガス排出を2013年度比で46%削減する目標の根拠について「おぼろげながら(数字が)浮かんできた」と言って失笑を買った。
ボロが出る前に解散総選挙
進次郎氏は出馬会見で環境相時代の言動について「反省している」と素直に非を認めた。フリー記者から「首相になってG7に出席したら、知的レベルの低さで恥をかくのではないか。それこそ日本の国力の低下にならないか。それでも総理を目指すのか」と突っ込まれると、「私に足りないところがあるのは事実。それを補ってくれる最高のチームをつくる」とクールにかわした。ネットでは好意的な書き込みが相次ぎ、進次郎氏は株をあげた。環境相時代に比べれば「防衛力」を身につけたようである。
けれども総裁選で石破氏や茂木敏充幹事長らベテラン勢から事細かな政策論議を吹っ掛けられて立ち往生し、軽率な発言が再び飛び出すリスクは少なくない。総裁選を乗り切っても、その後の国会の予算委で立憲民主党代表選の勝利が有力視されている野田佳彦元首相らに丁々発止の論戦を仕掛けられ、うっかり口を滑らせる恐れもある。だからこそ予算委を開催せず、ボロが出る前に解散総選挙にまっしぐらに急行する「10月27日投開票」の超短期決戦シナリオが練られているのだ。
進次郎氏は出馬会見直後に地元・神奈川新聞のインタビューに応じ、7月の東京都知事選で社会問題化した「掲示板ジャック」や「不適切なポスター」を防ぐための公職選挙法改正について「信を問うことが最優先だ」と述べ、同法改正にこだわらずに衆院解散に踏み切る姿勢を鮮明にした。とにかく決戦を急ぐ構えである。