今すぐ停戦しても平和にはならない

ウクライナ戦争の責任はロシアにあります。理由は単純で、戦争を始めたのはプーチンだからです。ウクライナや東方拡大を進めるNATOにも問題があるといった複雑な背景を語る前に、先に暴力を振るった側に第一義的な責任があります。民族や宗教の衝突、領土問題など、どの国家間にも緊張関係はあるものです。それでも戦争にならないようにほとんどの国が自制して保っている秩序を、プーチンはわざわざ破ったのです。

「戦争の長期化を招いているゼレンスキーにも責任があるのではないか」という意見に対しては、被侵略国の責任を問うのはおかしいと断言します。この戦争を長期化させないための一番簡単な方法は、プーチンが戦争をやめることです。ウクライナがロシアの侵略に抵抗せずに戦争を停止するという選択肢も理論的には考えられますが、これは「侵略の成功」であって「戦争の早期解決」ではありません。

仮に今すぐ停戦したとしても、平和な日常は戻りません。組織的な拷問や性的暴行、略奪や子どもの連れ去りといったロシア軍のこれまでの振る舞いを見ても、占領地域で人道危機が続くことは十分に考えられます。

ロシアとウクライナはもう2年半も全面戦争を続けています。さらに私たち軍事研究者の多くは、3年目を迎えたこの戦争がこのまま4年目に突入するだろうと予想しています。今年8月にはウクライナによるクルスクへの越境攻撃が報じられましたが、この作戦があってもなくても犠牲者は増え続けるでしょう。本当の問題はこの作戦による犠牲者数の増減よりも、クルスクでの限られた軍事的成功をどうやって政治的な成果につなげるかということです。その意味では、今のところウクライナの思い通りの成果は上がっていないように見えます。