自由民主党の新しい総裁に石破茂氏が選ばれた。総裁選序盤で優位に見えた小泉進次郎氏はなぜ失速したのか。『「ことば」の平成論』(光文社新書)の著者で神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「雇用や年金といったセンシティブなテーマについて『ことば足らず』な言い回しで発言したことで、誤解と幻滅が広がったのではないか」という――。
自民党総裁選立候補者討論会で、パネルを手に発言する小泉進次郎元環境相=2024年9月14日、東京都千代田区の日本記者クラブ[代表撮影]
写真=時事通信フォト
自民党総裁選立候補者討論会で、パネルを手に発言する小泉進次郎元環境相=2024年9月14日、東京都千代田区の日本記者クラブ[代表撮影]

進次郎氏ほど「刷新感」のある総裁候補はいなかった

小泉進次郎氏の自民党総裁選への出馬会見は鮮烈だった。

「自民党が真に変わるには、改革を唱えるリーダーではなく、改革を圧倒的に加速できるリーダーを選ぶことです」と高らかに宣言し、「決着」をキーワードに掲げた。不安視された質疑応答でも、フリージャーナリストから「知的レベルの低さで恥をかくのではないか」と問われたのに対して、チーム作りを強調した上で、「『あいつマシになったな』と、思っていただけるようにしたい」と切り返した

43歳という、9人の立候補者の中で最年少の若さだけではない。滝川クリステル氏との間に2児をもうけ育児休業を取得するなど、「刷新感」を醸し出すのに、進次郎氏ほどの適任者はいなかったのではないか。

ブレーンも揃っていた。出馬会見の司会を務めた小林史明衆議院議員も41歳と若手の代表格であり、内閣官房副長官として岸田文雄首相を支えてきた村井英樹衆議院議員(44)もXに長文をポスト(投稿)し、いかに進次郎氏に期待を託せるかを熱弁していた。

「小泉劇場」の再来と見られていたが…

週刊現代が、立候補会見の遥か前に「小泉進次郎、総理になる」と大見出しを掲げていたのは、先走りではなく、世の中のムードを反映していたに違いない。次の総選挙の顔となり、自民党を逆境から圧勝に導くのは、進次郎氏しかいないのではないか。そんなムードが、支持者だけではなく、野党側からも諦めに似た雰囲気の中で漂っていた。

しかし、進次郎氏は、選挙戦の中盤で急に勢いを失った。とりわけ、自民党支持者からの支持を得られなかった。実際、党員・党友票は61票と、109票の高市早苗氏、108票の石破茂氏には遠く及ばなかったのである。

なぜ、こんな結果になったのだろうか。