17年ぶりの新商品「晴れ風」好調の要因
――祖業のビール類ですが、2026年10月の酒税改正によりビールと発泡酒との酒税は統一されます(ビールが下がり、発泡酒は上がる)。商戦の中心はビールになっていきます。主力の「一番搾り」をどう位置づけますか?
【南方】「一番搾り」は、キリンの基幹ブランドです。あらゆる層のお客さまから支持されています。「一番搾り」のブランド力を高めていくのは、最重要課題。投資を続けて、幅広くお客さまを取り込んでいき、より深いお付き合いをしていただけるよう商品の魅力を上げていく。今年6月の製造分から、リニューアルをしておかげさまで好評を博しています。
――今春には17年ぶりとなるビールの新商品「キリンビール 晴れ風」を投入しました。売れていますか?
【南方】売れています。発売時の4月2日に掲げた年内の販売目標は430万箱(1箱は大瓶20本=12.66ℓ)。売れ行き好調なので7月、550万箱に目標値を上方修正しました。
「一番搾り」で取り込みにくい層、特に20代や30代の若い人たちを「晴れ風」で取り込んでいきたい。2026年10月の(税額)一本化に向けて、基幹ブランドの「一番搾り」、第2ブランドの「晴れ風」という布陣で、ビールカテゴリーの商戦に臨んでいきます。
市場は“ビール復権”が鮮明に
〈酒税改正は2020年10月、23年10月、26年10月と三段階で実行されていく。ビール、発泡酒、旧第3のビールと三層だった酒税は、26年10月に350ml缶で54.25円に統一される。昨年10月の第2回で旧第3のビールはなくなり発泡酒に組み込まれた(発泡酒②)。2006年5月から20年9月まではビール77円、発泡酒46.99円、旧第3のビール28円だったが、現在はビール63.35円、発泡酒46.99円。税額に16.36円の差がある〉
――1994年10月にサントリーが発泡酒を発売して以来、大手4社は税額が低い分安価な発泡酒、旧第3のビールの新製品投入に力を入れてきました。バブル経済が崩壊し、デフレが進行するなかで、サラリーマンの給料は増えずに安価なものが求められていました。
【南方】そういう流れでした。しかしいまは、(3段階で減税されている)ビールの構成比は大きくなっています。
〈23年のビール類市場はビールの構成比が、6年ぶりに5割を超えたと推計されている。酒税改正からキリン「晴れ風」のほか、アサヒビールは昨年10月アルコール度数を3.5%に抑えた「スーパードライ ドライクリスタル」を、サントリーは昨年4月「サントリー生ビール」を発売するなど、各社ともビールの新製品投入に力を入れている〉