セブン‐イレブン・ジャパンが店内で焼いたピザを宅配するサービスを始めている。何が目的なのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「デリバリーサービス『7NOW』の売上を伸ばす戦略があることが伺える。だが、その先にある“本命”はオムニチャネルビジネスの成功だ」という――。
ドミノやピザーラがあるのになぜピザなのか
セブン‐イレブン・ジャパンが宅配ピザサービスに本腰を入れるようです。これまで首都圏約30店舗で試験販売していたものを、この8月に全国約200店舗に拡大すると発表しました。
マルゲリータ(780円)と照り焼きチキン(880円)の2種類の冷凍ピザを店内のオーブンで焼き上げて、注文から最短20分で自宅に届けてくれる新サービスです。
ピザ自体はおいしそうですが、読者の皆さんは、
「ドミノピザやピザーラがあるのに、いまさらなぜセブンがこの市場に参入するの?」
と疑問に感じるかもしれません。実はこの新サービス、企業戦略を学ぶための格好の教材になる話題です。このニュースがセブンの戦略とどうつながるのか、企業戦略の専門家の視点から3つの切り口で解説したいと思います。
戦略の根底にある「7NOW」
1.ユーザーニーズで捉えた「ピザの意味」
今回のピザ参入、セブン‐イレブンの発表をベースに理解すると、今年の春頃から力を入れ始めたコンビニデリバリーサービスである「7NOW」が戦略の根底にあることがわかります。
セブン‐イレブンの店頭では今年の春から夏にかけ、女性が頭をかきながら「あっ! 買いに行けない。」と言っているポスターが貼られています。「朝・昼・夜いつでもお届けします」というキャッチコピーの7NOWという宅配サービスの宣伝です。
このサービスはセブン‐イレブンの商品をスマホで注文するとセブンの店員ないしはウーバーの配達員が自宅まで届けてくれるサービスです。
便利なのですが、配達料に加えて商品価格が店頭価格よりも少し割高に設定されていて、店頭で1000円程度で購入できる商品を7NOWで配達してもらうと、だいたい1.5倍くらいの支払い総額になります。