別の新しいサービスが発表される可能性もある

さらに言えば、「このピボットは失敗だ」と思ったら企業は何度でも別のことを試します。この先、ピザを扱う店舗数が増えてくれば成功ですが、そうではなく別の新しいサービスが発表されるかもしれません。それはセブンから見れば失敗ではなく「ひとつ新しいことがわかった」ということで、これも新規事業にとっては前進なのです。

さてここまでお話しすると、

「わかった。要するにセブンにとっては宅配ピザデリバリーが新規事業で、それがうまくいけば成功だし、うまくいかなくてもがっかりすることはないということだね」

とお感じになるかもしれません。

それはそうなのですが、この話、戦略論として考えるともう少し深くて重要な話が根底にあります。それを3番目の視点としてお話ししたいと思います。

オムニチャネルの成功で業績を伸ばすウォルマート

3.新事業投資に必要な「長期」の意味すること

企業戦略の本当の根本のところをお話しすると、その定石は「高い確率で成長しそうだと考える市場に、先行して長期投資をし続けること」だと言えます。この高い確率で成長しそうだと考える市場というのが、ピボットで言う「軸足」のことです。

そしてセブンの場合、その軸足は実はデリバリービジネスではありません。本当に軸足だと考えている市場はもう一歩俯瞰した「オムニチャネル」なのです。

「OMNICHANNEL」と書かれたジグソーパズルのピース
写真=iStock.com/kemalbas
※写真はイメージです

ネットで注文して店舗で受け取ったり、店舗で購入した経験があるものをネット注文してデリバリーしてもらったりと、多様なチャネルでの多様な購買体験が広がることを総称してオムニチャネルといいます。あらゆる小売業がこのオムニチャネルの方向に進化していくと予想されるのですが、それが日本ではやや紆余曲折が起きています。

簡単に言うと、日本ではオムニチャネルよりもインターネット通販のほうがはるかに成長しているのです。

この日本の状況とやや様相が異なるのがアメリカです。アメリカではもちろんアマゾンも成長しているのですが、ネットで注文して店舗で受け取るオムニチャネル市場もコロナ禍で大いに成長しました。このオムニチャネルの成功でここ数年業績を伸ばしているのがウォルマートです。