「茂木ライン=増税ゼロ」に最も近い“意外な候補者”とは

高市氏は増税に積極的な姿勢を見せていないが…

高市早苗経済安全保障担当大臣も、前回の自民党総裁選挙で2%の物価目標安定化達成後に金融所得課税を実施することを公言してきた。今回の出馬記者会見等では増税には積極的な姿勢を見せてはいないものの、過去の金融所得課税に関する発言を修正していない。消費税については、国難級の事態が生じた際に減税を検討する旨を述べたが、それはコロナ禍でも消費税減税しなかった安倍政権と同様のスタンスにすぎない。

河野氏の政策には「消費税の大幅引き上げ」が必要

河野太郎デジタル大臣は、前回の総裁選挙出馬時に、基礎年金を消費税で賄う方針を打ち出しており、その主張については何ら修正されていない。その財源としては消費税の大幅引き上げが必要とされるため、その対となる現役世代の保険料負担の軽減とのバランスが問われることになる。また、今回の出馬記者会見では、高齢世代間で社会保障負担を負わせるとしているが、その増税案がどのようなものになるかも不明瞭だ。そもそも、自民党は消費税も社会保険料も両方とも引き上げてきた経緯があり、実は消費税や社会保険料はトレードオフの関係にすらなっていないという事実をどのように説明するのだろうか。

コバホークは「茂木ライン=増税ゼロ」に最も近い

小林鷹之議員は、財務省出身者ではあるものの、今すぐの金融所得課税や防衛増税には積極的な姿勢を示しているとは言えず、実は茂木ライン=増税ゼロに最も近いことを主張している候補者でもある。ただし、元財務官僚らしく「『今は』増税ではない」という言葉を述べており、経済状況や世論状況によっては増税を匂わせる含みを残している。

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「マクロ経済・財政運営の常識」に対する賛否が問われる

このように、茂木ライン=増税ゼロを超える増税反対・減税賛成を明確に示している有力候補者は一人もいない。閣僚経験なしで衆議院議員でもない青山繁晴参議院議員のみが減税に踏み込んだ主張をしているが、同議員の総裁選出馬の本気度を疑う声もあり、議員の個人的なパフォーマンスとして捉えられても仕方ないだろう。

茂木幹事長にとって今回の自民党総裁選挙は年齢面から背水の陣と言える戦いだ。そのため、増税ゼロでもマクロ経済は運営できる、という本当のことを主張する大胆な(ただし、常識的な)主張に至ったものと推測される。

茂木幹事長の古い財務省の発想を転換する、という発言は、政治家の経済・財政政策の運営に関する国民の評価基準を転換する、ということにもつながる。

自民党総裁選挙や衆議院解散総選挙も含めて、有権者は茂木ラインが示した「増税ゼロでも大丈夫」というマクロ経済・財政運営の常識に対する賛否を基準として、政治家を評価して投票するべきだ。

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