主要候補者たちは「茂木ライン」に一斉反発

「茂木vs.林」は、今後の税制議論の主導権争いとして要注目

さて、増税ゼロを掲げる「茂木ライン」には、他の主要総裁選挙候補者らもこぞって懸念を表明した。

岸田派系議員らが推す林芳正官房長官は防衛増税停止に関して強く反発した。林芳正官房長官の推薦人には、防衛増税を推進する与党税制調査会会長の宮澤洋一議員が入っている。そのため、政策的・政局的に林官房長官は「茂木ライン=増税ゼロ」と真っ向から反対する大増税候補者として、非常に分かりやすい構図となっている。茂木vs.林の衝突は今後の自民党内での税制議論の主導権争いになるという意味では注目に値する。

積極増税派の政策は、日本経済に深刻な打撃を与える

上川陣営の事務局長は「キラキラリベラル型」増税派
「キラキラリベラル型」増税派議員の牧原秀樹氏
「キラキラリベラル型」増税派議員の牧原秀樹氏(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

同じ岸田派系議員として、上川陽子外務大臣の税制に関する姿勢は不鮮明だ。本稿は上川陽子氏の総裁選出馬表明前の9月10日に執筆しているが、同陣営の事務局長を務める牧原秀樹衆議院議員(埼玉5区)は、国際連帯税創設を求める議員連盟事務局次長として活動してきた「キラキラリベラル型」の積極増税派の一人だ。

国際連帯税とは貧困や飢餓、気候変動や感染症など、地球規模的な課題に対応するための増税であり、具体的には航空券連帯税、通貨取引税、金融取引税などを求めるものだ。このうち、通貨取引税や金融取引税は日本経済に深刻な打撃を与える大増税につながる可能性が高く、マクロ経済運営に関するマトモな感覚があるとは思えない。現役外務大臣として上川議員がこのような人物を選対事務局長に据えたことについて、税制に関する見識に疑問を持たざるを得ない。

石破氏の「金融所得課税」は、経済成長を阻害する愚策

石破茂議員は、茂木ラインに対して疑問を呈するとともに、金融所得課税に積極的な人物だ。金融所得課税は日本の経済成長を阻害することを明白であるにもかかわらず、格差是正を目的とする増税を軽はずみに主張するスタンスに呆れざるを得ない。日本経済を腰砕けさせる増税は堅調な税収増のブレーキとなり、結果としてさらなる増税が必要となる負のスパイラルを生み出す愚策であることすら分からないのだろう。